<文献紹介第22弾>
「人工呼吸器患者のCVPは、CVP − PEEPで計算すればいい!?」
さて、久々の投稿になりましたが、今回は「以外と知らないシリーズ」です。
第一弾は、人工呼吸患者のCVPについてです。
CVPは中心静脈圧をモニタリングすることで前負荷や心タンポナーデなどの疾患を早期発見するなどできます。
人工呼吸器患者ではPEEPがかけられているため、本来のCVP(PEEPがない状態のCVP)がどの程度なのか分かりにくいです。
そのような状況で、「人工呼吸器患者のCVPは、CVP − PEEPで計算すればいいの!」
これは、以前あるベテランの看護師から言われた言葉です。
皆さんはこの言葉を聞いてどう思ったでしょうか?
知っている人が聞いたら、「そんなアホな!?」と思うでしょうが、ベテランから新人の時に言われたら信じてしまいますよね。
答えから言うと、人工呼吸器患者でも「CVP − PEEP」をしてもPEEPを除去したCVPにはなりません。
なぜかというと、胸腔内圧は気道内圧とイコールではないからです。
例えば、肺のコンプライアンスが低下している(肺が硬い、膨らみにくい)患者の場合と、コンプライアンスの高い(肺が柔らかい、膨らみやすい)患者で比べてみましょう。
PEEP 5cmH2Oで肺を膨らまそうとしますが、ARDSなど重症呼吸不全のようにコンプライアンスが低い患者では、PEEP 5cmH2Oでは肺も十分に膨らみませんよね。そういう状況では、肺が膨らんでいないので、胸腔内圧に与える圧の影響も変わってきますよね。
つまり、肺の状態によって胸腔内圧は変わるということです。
もちろん、CVPは肺の状態だけでなく、様々な因子で変化します。なので、「CVPは輸液反応性の当てにならない」というのがICUの常識となりつつあります。
でも、本当に「CVP − PEEP」が間違いなのかと疑う人もいるでしょう。
そこで、「The influence of positive end-expiratory pressure on stroke volume variation in patients undergoing cardiac surgery: an observational study.」http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25224551
の文献の中で紹介されたPEEPによる圧の影響を画像(表)に示します。
「P0」というのがPEEP 0cmH2O、「P5」がPEEP 5cmH2O、「P10」がPEEP 10cmH2Oの時です。
縦軸がそれぞれ循環のパラメーターです。
これを見ても「CVP − PEEP」が間違いということがわかります。
なんども言いますが、CVPは様々な因子によって変化します。肺の状態、呼吸器設定、縦隔圧などがその因子です。
私たち看護師は数値のみを記録すれば良いというものではなく、数値をアセスメントして患者の状態を把握していく必要があります。
そのためには、KKD(感覚、勘、度胸)ではなく、正しい知識を持って看護する必要があるでしょう。