<文献紹介第25弾>
「CVPって輸液反応性、循環血液量(前負荷)の指標にならない!?」
「Does Central Venous Pressure Predict Fluid Responsiveness?」
まず、アンケートへのご協力ありがとうございました。
CVPの現状を知れる良い内容となりました。
今回は、意外と知らなかったシリーズのCVPなので、このアンケートを踏まえて内容を提示できればと思います。
早速アンケートを見たいと思いますが、アンケートは2つの考え方に分けられると思います。
1つは、CVPを頻回に測定する施設。
もう1つは、CVPを必要時のみ(1割程度の患者)測定する施設です。
では、なぜCVPの測定に施設のばらつきがあるのでしょうか?
それは、「CVPが循環血液量や輸液反応性を示す指標である」という考え方と、「CVPはコイントスと同じようなもの」という2つの考え方があるからです。
では、これに関して文献を基に考えていきましょう。
私たちは何気なくCVPを測定していますが、CVPはそもそも何のために測るのでしょうか?「CVPが循環血液量や輸液反応性を示す指標である」というのは本当なのでしょうか?
これに対するヒントが今回紹介する文献です。
彼らは、いろんな研究を基に本当にCVPは輸液負荷を反映しているのかについて調べています。
その結果を添付している図に示していますが、図を見てください。
これを見ると、CVPが低くても、高くても輸液反応性についてはまばらな結果であり、CVPが輸液反応性を示していないことがわかります。
他の文献でも、「CVPはコイントスと同じ(50%の確率しかない)」とも言われています。
Dynamic changes in arterial waveform derived variables and fluid responsiveness in mechanically ventilated patients: A systematic review of the literature
つまり、海外のICUでは、「CVPは当てにならない」というのが常識になりつつあり、CVPは必要時のも測定する程度で良いだろうと言われています。
では、なぜCVPがコイントスと同じなのか。。。
それは、「圧=量」を示していないからです。
もう少しわかりやすく言うと、「CVPは縦隔の影響を受けて容易に圧を変化させてしまうため」です。
例えば、風船を50ccの水で膨らませて、風船の中の圧を測定したとします。
その風船を手で握れば(外から圧をかければ)、風船の中の圧(CVP)は高くなりますよね。でも、風船の中の水の量(循環血液量)は変わっていません。
さらに、風船にもいろんなゴムの硬さ(血管の弾性)があります。柔らかいゴムの中に水を100cc入れても硬いゴムの風船に50ccの水を入れるのと同じ圧かもしれません。
さあ、あなたはこの風船の中の圧でどれだけ水の量を知ることができるでしょうか。
ICUでは、CVPに影響を与える治療がたくさん存在します。
例えば、人工呼吸器設定もその一つです。以前、CVPとPEEPに関する文献紹介をしましたが、PEEPをあげればCVPも変化します(ただし、CVPとPEEPも一律な関係ではありません)。
他にも自発呼吸があるかどうかでも変化します。それは、胸腔内圧が変化することで縦隔圧が変化し、CVPの圧も変化するからです。
他にも、腹圧などによっても変化しますよね。などなど、、、CVPはあくまで「圧」を測定しているため、影響されやすく、循環血液量のみを示しているものではありません。なので、CVPを循環血液量をモニタリングする上で数時間ごと測定する必要はないのかもしれません。
ましてや、それを行うために、毎回患者さんの体位をフラットにする方が様々なリスクもあるため、CVPを測定するのであればそれらリスク管理もアセスメントする必要があるのかもしれませんね。
「じゃあどうすんの!」と突っ込まれそうですが、循環血液量を評価するには全身評価が必要です。一つのデータに固執することなく、全身評価をして患者の病態、データなどからアセスメントする必要があるでしょう。最近はやりの臨床推論っていうやつですね。
ちょこっとアドバンス:CVPを高く保てば腎機能を改善させるというものはありません。むしろ、CVPを高く保ちすぎるとAKI(急性腎不全)を引き起こすというエビデンスはあります。それはなぜかというと、腎うっ血を起こしている可能性もあるからです。単純にCVPを高く保てば良いというものではありません。