「身体的なアウトカムをいかに改善するか」ということは,医療を提供する私たちが忘れてはいけない重要な課題です.特に,死に直結するような重症な傷病に立ち向かうことが多いクリティカルケアには,最悪のアウトカムである「死亡」の割合を減らすことを目標とした医療戦略がたくさんあります.そして,日々カイゼンを繰り返してきた甲斐もあって,これらの戦略の成果も飛躍的に伸びています.

 

この望ましい成果は,新たな課題を生み出しました.PICSに対するケアに代表されるような,生存者の「その人らしさをいかに保つのか?」という問題は,これらのカイゼンの繰り返しによって,私たちが勝ち取った新たな課題とも言えるものでしょう.

 

さらに,この新しい課題に対する取り組みも,たくさん生み出されています.

「熱い」皆さんもその取り組みの質を上げることに試行錯誤されているのではないでしょうか?

 

今回紹介する文献は,これらの「患者中心のアウトカム」を上げる取り組みの世界的な現状を教えてくれるものです.

 

Improving outcomes after critical illness; harder than we thought ! ,Intensive Care Med, Vol.42(11), 1772-1774, 2016

 

https://goo.gl/KsBdv4

 

この文献で紹介している表を見ても分かるように,現時点では,新たな取り組みのアウトカムは十分に出ていません.

 

例えば,

ICU入室中の人工呼吸患者に理学療法・作業療法を行うことで,退院後のADLは改善していたという報告(Schweickertら,2009)もあれば,心理・身体的な介入を行ったのに1年後のQOLが特別良かった訳ではなかったという報告(Cuthbertsonら,2009)や半年後の身体機能が特別良かった訳ではなかったという報告(Elliotら,2011)もあったようです.

 

誤解を恐れずに言うなら,「患者中心のアウトカムを改善する」ための方法は,世界的にも模索中だということです.

 

この模索には,身体的なアウトカムの上げるために繰り返してきたカイゼンと同様の取り組みが必要になるのかもしれません.

 

・その取り組みは,本当にその患者に行うべきものなのか?

・その取り組みで大切にしている介入は,方法として正しいのか?

・アウトカムを上げるために集められたチームメンバーは,本当にその人たちで良いのか?

・その方法で行われた結果を,本当に「エビデンス」として考えて良いのか?

 

例えば,Jonesら(2010)は,ICU入室中の人工呼吸患者に対して,日記をつけることで,3ヶ月後の効果を示したと報告しています.しかし,彼らが結論づけた効果(3ヶ月後のPTSDが発症していなかった)は,たまたま見つかったアウトカムだった(primary outcomeとして設定されていなかった)ようなのです.

 

新しい課題に対する取り組みには,まだまだカイゼンする余白がたくさんあります.

その余白を埋めるための一番の近道は,この文献で紹介されているような疑問に立ち向かう努力を続けていくことなのかもしれません.

 

そして,患者のすぐそばにいる私たちが,そのカイゼンの中心に立つべきなのかもしれませんね.

 

《画像引用元》

1枚目:紹介文献からの引用

2枚目:http://www.nextwaveconnect.com/blog/health-care-services-difficult-to-define-difficult-to-measure

 

improving-outcomes-after-critical-illness-harder-than-we-thought

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