<KCCC文献紹介第63弾:NGチューブの挿入時の痛みを緩和するためにはキシロカインスプレー3push!?>

NGチューブを挿入しやすくするためにリドカインスプレーを使うべきか?

CP Chan,FL Lau.(2010)Should lidocaine spray be used to ease nasogastric tube insertion? A double-blind, randomized controlled trial. Hong Kong Med J.16:282-6.PMID: 20683071

【背景】

 救急領域では、NGチューブ挿入は、日常的に行われているリスクを伴う不快な処置である。にもかかわらず、見解が一致した鎮痛薬使用のガイドラインはない。【目的】救急部門におけるNGチューブ挿入前のリドカイン鼻腔スプレーの有効性と安全性を調査すること

【方法】

本研究は、2005年5月30日〜2005年10月20日の間に香港の都市部の病院の救急部に入院した、イレウスもしくは上部消化管出血の成人患者(18歳以上)206名を対象とした、二重盲検無作為化比較試験である。重症外傷、顔面の外傷、頭蓋底骨折、sBP≦100mmHg、リドカインアレルギー、咽頭反射の障害、気道損傷、妊婦、授乳中の患者は対象外とした。コンピューターを用いてリドカイン群とコントロール群に、無作為に分類し、10%リドカイン(あるいは生食)スプレーを両鼻腔に1push(1ml)ずつ、咽頭に2push(2ml)散布し16FrのNG tube(KYジェル1ml塗布)を挿入した。挿入時間はスプレーから5分間までとした。NGチューブ挿入後、不快さを10mmのVASで評価し、挿入の困難度を5段階のリッカートスケールで評価した。統計解析は、平均値の比較は、共分散分析を用いた。カテゴリー間のベースラインからの変動の比較は、Fisherのカイ自乗検定を行なった。

【結果】

 経鼻胃管挿入が必要とされた成人患者224名のうち、206名を対象とした(リドカイン群103名、プラセボ群103名)。不快感を示すVASは、リドカイン群2 vs プラセボ群9で、リドカイン群が有意に低かった(p<0.005)。挿入時の困難感は、リドカイン群1(最小程度困難) vs プラセボ群3(中程度困難)であった(p<0.005)。挿入に要した時間は、リドカイン群1.5分 vs プラセボ群4.5分(p<0.005)であり、挿入が成功するまでに要した回数は、リドカイン群1回 vs プラセボ群2回であった(p<0.005)。挿入を失敗した割合は、リドカイン群10% vs プラセボ群85%(p<0.005)であった。有害事象としては、嘔吐を誘発した割合が、リドカイン群4% vs プラセボ群65%(95%CI4-9,p<0.001)、呼吸困難につながった割合が、リドカイン群1% vs プラセボ群41%(95%CI4-9,p<0.001)であった。リドカインによるアレルギーはいずれの群でも生じなかった。以上より、プラセボスプレーの使用と比較して、リドカインスプレーの使用は、患者の不快感の減少、および経鼻胃チューブ挿入の困難性の減少と関連していた。

【結論】

経鼻胃管挿入前の鼻腔内リドカインスプレーは、処置に関連する患者の不快感を軽減するのに安全かつ有効であった。

【私見】

NGチューブの挿入は、日常的に行われていますが、挿入時の疼痛効果を深く考えたことはありますか?かくいう私も、「痛いですよね、頑張ってください」と、NGチューブの挿入介助についていたこともあり、猛省しております。リドカインスプレー群で、NGチューブが挿入しやすくなったのは、嘔吐反射が少なくなって、嚥下しやすくなったことも考えられます。ここまで苦痛が緩和され、有害事象も減らすことができるのであれば、意識のある患者さんかつ、キシロカインアレルギーがなければ、リドカインスプレーを3pushしてもいいのではないでしょうか?(論文の手順では、4pushですが、一回で成功するなら挿入側の鼻だけにすれば3pushですむのではないかと思いました)ちなみに、この研究で潤滑剤として使用されたKYゼリーや臨床でよく使用されるカテゼリーには、キシロカインは含まれていません(痛み止め効果はありません)。

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