【コラム47:あなたの“やりがい”、搾取されていませんか?】

唐突ですが、皆さんは仕事に“やりがい”を感じていますか?

また皆さんの周りに、仕事熱心で、誰からも頼られていて、「この人、仕事に“やりがい”を感じているんだろうな」と思う人は、いませんか?

私もこれまでそんな人達と一緒に働き、かっこいいな…でも自分にはできないな(笑)と思いながら過ごしてきました。

しかし最近、「仕事にやりがいを感じると労働搾取につながりやすい」ということがアメリカの研究グループによって明らかにされました。労働(やりがい)搾取とは、労働者に対して労働力の対価を金銭ではなく“やりがい”を報酬として認識させ、長時間労働を無償で行わせることです。仕事に熱心な労働者は上司に無給で長時間労働を命じられたり、本来の仕事と関係のない仕事を命じられる傾向にあるようです。とても腑に落ちる結果だなと、個人的には感じていますが、この現象には、「機会が与えられなくても、熱心な労働者が自ら志願する」「熱心な労働者にとっては、働くこと自体が報酬である」という2つのメカニズムによって発生していることが明らかにされています。また、労働搾取されている労働者は周囲から「やる気のある人」と評価される傾向にあるいうことも明らかになっています。こういった他者からの評価が、労働者にとっての内的動機づけにもつながり、知らぬ間に労働搾取を受け入れてしまう…なんてこともあるかもしれません。

労働搾取については、過労死につながる問題としてメディアで特集がくまれることもあり、既にご存じの方も多いと思います。労働搾取は、仕事に“やりがい”を感じやすい職種(教師、医療職など)で多いと言われているため、注意しておかないといけないですね。

個人的には肯定的なイメージの強かった“やりがい”について、少し否定的な内容ではありますが、決して“やりがい”が悪いというわけではありません。“やりがい”は、仕事をする上でのモチベーションにもつながるため、とても重要な要素だと思います。日本が第二次世界大戦後、高度経済成長を成し遂げられたのは、明確な目標に向かって“やりがい”を感じながら働き続けた労働者がいたからこそだと思います。しかし現在は、「働き方改革」をはじめ労働者の働く環境は大きく変化してきています。組織は、個人の“やりがい”を頼りにしているだけでは、組織・チームとして存続し、成果を出し続けることが難しくなってきているのではないかと感じています。これは看護職も他人事ではありません。日々交替制勤務をしながら、チームで働いている中で、“やりがい”を感じながら働いている特定の人だけが頑張っていていても、周りの協力がなければ当然成果は出ません。皆さんの職場は“やりがい”を感じて働いている人だけが疲弊してしまう環境になっていませんか?

私は、労働搾取を解消するためには組織が適切な人的資源管理を行うことも必要だと思いますが、個人レベルでできることもあるのではないかと思っています。それは、看護師一人ひとりが自分の強みを伸ばすことです。各々が誰にも負けない強みを持っていれば、適材適所に仕事は分配され、チーム力は強化されるのではないでしょうか。

KCCCには多種多様なリソースが集まっています。臨床における疑問なども受付けていますので、是非有効活用してください。

参考文献:

Kim, Jae Yun,Campbell, Troy H.,Shepherd, Steven,Kay, Aaron C(2019):Understanding contemporary forms of exploitation: Attributions of passion serve to legitimize the poor treatment of workers.Journal of Personality and Social Psychology.

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