「物事をネガティブに考える人は、心臓外科術後のせん妄・昏睡期間が長引く」

Type D personality is a predictor of prolonged acute brain dysfunction (delirium/coma) after cardiovascular surgery.

Matsuishi Y, Shimojo N, Unoki T, et al. BMC Psychol. 2019 2;7(1):27.

PMID: 31046844

背景:

これまで、うつ症状と術後せん妄に関する研究は広く行われてきたが、その背景の因子として疑われる、タイプD性格を持つ患者と術後せん妄の関連に関しては明らかにされていなかった。本研究は、生来備わったタイプD性格であるという特徴と、一次的に生じるうつ症状、そして精神医学上の症状であるせん妄という3つの関係性の解明の検証を行った。

方法:

2015.10-2016.8において、筑波大学附属病院で心臓血管外科手術を受ける患者を対象に、術前に性格判断とうつ症状に関する質問を行うとともに、術後の1週間におけるせん妄や昏睡状態などの意識状態を観察し、媒介因子解析と回帰分析を行った。

結果:

対象者142名中、せん妄発症率は34%、タイプD性格の患者は37人(26%) で、タイプ D 性格患者のせん妄発症率は、非タイプ D 性格患者と比べて高い傾向を認めた(45% vs. 30%)。また、術後1週間のせん妄及び昏睡期間(delirium/coma days 以下 DCDs)を急性脳機能障害が生じている期間と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて多変量解析を行った結果、タイプD性格自体がDCDsのリスク因子であることが判明した(オッズ比 0.37[95%CI:1.3~6.1])。 さらに、タイプ D 性格患者と非タイプ D 性格患者を比較すると、タイプ D 性格患者では、うつ症状がDCDsに与える影響が強いことも明らかとなった(オッズ比 1.7[95%CI:1.2~2.2])。 また、媒介因子解析を行ったところ、タイプ D 性格とDCDsの関連性を部分的にうつ症状が媒介していることが明らかになった(p=0.04)。

結論:

タイプD性格は、心血管系患者における急性脳機能障害(せん妄 / 昏睡)の予後予測因子であり、タイプD性格の患者がうつ症状を持つことにより、心臓外科術後一週間のせん妄・ 昏睡期間に影響を及ぼす。

私見

物事をネガティブに考え、我慢強い性格(タイプ D 性格)の患者は、そうでない患者に比べて、心臓外科術後に急性の認知機能障害(せん妄)・昏睡期間が長引く傾向があることを、初めて明らかにした論文です。

しかもこの論文はあの筑波から!first authorは松石さんです。

 ベッドサイドケアにおいて、性格などの人格的要因を考慮することの重要性が示唆されていますね。この結果は、集中治療を必要とする状況においても、性格など の人格的要因を軽視せず、表現を苦手とする人のうつ症状に寄り添うことの重要性を示しています。

先行研究によると、日本国内でタイプ D 性格に該当する人は 46.3%と報告されています。心臓外科術後だけでなく、もしかしたら皆さんの周りにもうつ症状に苦しんでいるスタッフもいるかもしれません。私たちがケアすべき対象は、患者だけでなく同僚も含まれているのかもしれません。

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