<KCCC文献紹介 第86弾:患者や家族が判断できない場合、どうやって治療の中止を判断すればよいのか?>

TH Neville, JF Wiley, MC Yamamoto et al. (2015) Concordance of nurses and physicians on whether critical care patients are receiving futile treatment. Am J Crit Care. 24(5), 403-410.

元文献:http://ajcc.aacnjournals.org/content/24/5/403.long

【背景】

看護師や医師は、患者に対して意味ある利益をもたらすことが期待できないクリティカルケアを「無益なもの」と表現することが多く、「無益なもの」と認識しながら治療を提供することに対して道徳的な苦痛を抱いている。

【目的】

クリティカルケアの領域において医師および看護師が行う、「無益な治療」という評価の一致を探究する。

【方法】

臨床家を対象に行ったフォーカスグループ・インタビューをもとに、「無益な」クリティカルケアについてのコンセンサスを得た。クリティカルケアに従事する医師および看護師を対象に、3ヶ月の間、毎日、無益な治療を受けていると認識される患者を特定してもらった。それらの評価をもとに、看護師が無益と認識した患者と医師が無益と認識した患者の間で、生存率の割合を比較した。

【結果】

看護師と医師は、1086人の患者に対して6254人の評価を行った。無益な治療を受けていると認識された患者の人数は、看護師と医師で、ほぼ同数であった(看護師:110名 vs 医師:113名, P=.82)。一方で、誰が無益な治療を受けているかという認識は、あまり一致していなかった(κ=0.46)。看護師によって無益な治療を受けていると認識された患者(110名)は、医師によってそのように評価された患者(113名)よりも6ヶ月死亡率が低かった(68% vs 85%, p=0.005)。看護師にも医師にも無益な治療を受けていると認識された患者は、どちらか一方だけが無益な治療を受けていると認識した患者よりも、院内死亡率が高かった(両者:76% vs 看護師のみ:32%, P<0.001; 両者:76% vs 医師のみ:57%, p=0.04)。

【結論】

「無益である」と認識されるクリティカルケアの提供については、専門家間の一致率は低かった。そのような中でも、医師と看護師とで「無益だ」という認識が一致した場合は、患者のアウトカムを最もよく予測(院内死亡率が高かった)しており、医師と看護師の認識が一致することの価値を示唆している。

【私見】

重篤な患者と対峙することの多いクリティカルケアでは、「無益だ」と思える治療が行われることがあります。一方で、その「無益だ」の判断は、専門職によって違いがあるのではないか?という臨床疑問に切り込んだのが、今回ご紹介する文献です(ちなみに、多施設かつ医師と看護師が共同で行った貴重な研究です)。

 「いつからが終末期なのか?」という判断が特に難しくなるクリティカルケア領域では、患者の最期に向けたケアが遅れるという問題が生じることがあります。患者や家族にとって、限りのある残された時間を大切にするためにも、「無益な治療を受ける時間」から「最期を迎えるための時間」へのシフトを、できるだけ速やかに、できるだけ適切に行うことが望ましいことは言うまでもありません。このような意思決定は、患者や家族の意向を最優先にすることが大前提であるものの、時として、医療者にその決定がゆだねられる場面もあります。そのようなときに、専門職間での意見の相違は大きな問題になります。

この研究では、「何をもとに無益と判断するのか?」という点について、主な理由は看護師も医師も同様であったようです。

・治療による負担が利益を大幅に上回っている場合

・治療の効果がなかった場合

・死が差し迫っている患者に対して行われる治療

・ICUから退室することが不可能だろうと思われる患者に対する治療

一方で、「いつからそれを判断したのか?」であったり(医師の多くは入室3日目までに、看護師の多くは入室4日目までに判断していた)、「どんな患者に対して無益と思う傾向があったのか?」であったり(医師は施設からの転入患者に対して、看護師は重症度が高い患者に対して、無益なケアが行われているという認識を持ちやすかった)、には専門職間での違いがあったようです。

 「看護師は、医師よりもベッドサイドにいる時間が長いからこそ、現状を踏まえて考えやすい」という伝統的な認識もありますが、果たして本当に医師が適切な現状把握ができていないのでしょうか?

 死のギリギリまで全力で治療を行うことが、本人にとって本当に無益なのかを誰が判断できるのでしょうか?(本人ですらできないかもしれない…)

いずれにせよ、より良いケアのために専門職間で対話を尽くすことが重要なのは変わりないですね。

画像引用元:http://onesafetynet.com/news/futile-treatment/

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