Predictors of delirium after cardiac surgery in patients with sleep-disordered breathing. Eur Respiratory Soc. 

元文献

https://erj.ersjournals.com/content/early/2019/05/08/13993003.00354-2019

【背景】
 集中治療室でのせん妄の発生率は高く、特に、心臓血管外科術後は、約30%程度の患者にせん妄が発生しているといわれる程、発生頻度は高い。
 睡眠時無呼吸症候群(SDB)は睡眠時の呼吸障害の総称であり、SDBの代表的な疾患に睡眠時無呼吸症候群(SAS)がある。SDBは冠動脈疾患で有病率が高く、動脈疾患との関連があることが示唆されている。また、慢性心不全患者の約50%が中枢性睡眠時無呼吸症候群と診断されている。睡眠時呼吸症候群の有病率は30-70歳の男性で13%,女性で7%程度になる。このように心疾患と睡眠時呼吸症候群との関係が明らかになっているにもかかわらず、SDBとせん妄の関連はこれまでほとんど検討されていない。

【目的】
睡眠時無呼吸症候群と術後せん妄の発生との関係性について検討すること

【方法】
・心臓血管外科術後の患者におけるせん妄の発生頻度を前向きに検討した。
・対象:心臓血管外科術後の患者141名
・せん妄評価方法:集中治療室入室後から、抜管後最大3日間のせん妄発生率
         をCAMーICU を用いて評価した。

【結果】
1.患者背景:年齢(68歳 ±9)、BMI(28.7±4)
2.せん妄発生率:141名中、約23%の患者でせん妄が発症している。
3.睡眠時無呼吸症候群(SDB)との関係性:既往歴がない患者では約16%、
  閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の13%、中枢性睡眠時無呼吸症候群患者の49%にせん妄が発症する結果となっている。
4.年齢、性別、心不全の有無などとせん妄発生率について、
  多変量解析を行なった結果、以下の3つがせん妄の独立因子になっている。

70歳以上:オッズ比 5.63(p<0.001)
中枢性睡眠時無呼吸症候群:オッズ比4.99(P<0.001)(p<0.001)
心不全 :オッズ比 3.3 (P=0.001)

【結論】
中枢性睡眠時無呼吸症候群がせん妄の独立した危険因子であることが明らかとなった。

【私見】
睡眠とせん妄との関係性を調べていて偶然出会った論文になります。睡眠時無呼吸症候群は日本では2003年頃から世間で認識されるようになってきた疾患になります。そのため、まだまだ診断がされていない潜在的に睡眠時無呼吸症候群を持っている患者さんがまだまだいるとか。未治療・未診断で入院してくる患者が多いからこそ、日頃の観察が重要になるように感じます。また、睡眠時無呼吸症候群と聞くと、イビキをかいた後、気道閉塞を起こす閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)をイメージすることが多いかもしれませんが、論文の結果から中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)と比較して、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者のオッズ比は「0.43」とむしろせん妄発生率が低下する結果となっていました。そのため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)そのものが「せん妄の危険因子」となるわけではなさそうです。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)に分類される。
【閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)】
 睡眠中に上気道が閉塞して気流が停止することで無呼吸が生じる病態をいう。呼吸中枢の異常はないため、呼吸努力はあるので無呼吸の間も胸壁と腹壁の呼吸運動はみられる。
【中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)】
 呼吸中枢の異常によって睡眠時の呼吸が障害される疾患。呼吸中枢は脳の延髄にあり、肺や胸郭、末梢神経などに指令を出して呼吸運動を引き起こしている。しかし、何らかの影響によって指令が出なくなり、呼吸が止まったり浅くなったりする。呼吸中枢の異常のため、呼吸努力そのものが消失する。

【キーワード】
#せん妄(Delirium)、#危険因子(Risk Factor)、#心臓血管外科(Cardiac Surgery)、#睡眠時呼吸障害(Sleep-disordered Breathing)

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