<コラム59:DNARオーダー、正しく理解できていますか?>

 臨床で多くの患者を看ていく中で、積極的治療が奏功しないであろう患者に対してDo Not Attempt Resuscitation(以下:DNAR)指示を取得する場面があると思います。それらの多くは倫理的に問題なく、患者の意向や価値観、患者の病態や予後予測を踏まえて、多職種チームで検討されているものだと思います。 しかし、ふとした場面で“安易にDNAR指示が取得”されていたり、“DNAR指示だから何もしません”などというような場面に出くわすことはないでしょうか? 

 私たちが日常的に用いているDNARとはどのような概念なのか、確認してみましょう。下図を参照ください。普段、医学的な治療方針を決定する際に使うDNARですが、これはアドバンスケアプランニング(以下:ACP)、アドバンスディレクティブ(以下:AD)を前提とした患者の意向や信念、価値に基づいた医療行為の希望などに基づいた狭義の概念です。そのため、患者の意向や大切にしてきたことなどの情報収集を怠ったままDNAR指示が決定されるよう状況は、違和感を覚えて然るべきということです。集中治療領域では特に、代理意思決定により治療方針が決定されことも多くあります。DNARという決定に至るまでの話し合いで、患者の今までの生活で培われてきた価値や信念に関する情報が正しく盛り込まれているか、患者中心の最善の決定がなされるように意識すべき部分であると思います。ただ、悲しいことに、それらが話題の中心にないまま医学的側面だけでDNAR指示が決定されてしまう場面にも時に遭遇します。医療者がACPやAD、DNARなどの用語や意味、それらを確認するツールやガイドラインについてしっかりと学習する必要がまだまだあるのではないかと危惧します。 

図:ACP、AD、DNARの関係

 さて、ここまではDNAR指示取得までに必要なプロセスや考え方について述べてきました。次は、DNARの適用や解釈についてです。日本集中治療医学会が提唱している「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」1)の一部を紹介します。

 この勧告は、DNAR指示のもとに基本を無視した安易な終末期医療が実践されているのではないかという懸念から、DNARの正しい理解に基づいた実践のための勧告として2017年に出されたものです(詳細は引用文献のpdf参照)。その中で、DNAR指示は心停止時のみに有効である。心肺蘇生不開始以外は集中治療室入室を含めて通常の医療・看護については別に議論すべきであると述べられています。DNARの定義は「急変時または末期状態で心停止・呼吸停止の場合に、蘇生処置をしないという取り決めのこと」なので、DNAR指示があるからといって急変時や終末期医療と区別される通常診療において治療が制限されてはいけないということです。普段の臨床において、DNARを取得しているという理由で通常診療上の治療の減量や終了が行われていないかどうか、意識を向けてみてください。時に、DNARを誤った解釈のまま用いている医療者も少数ながら存在します。そのときは、正しい知識をもった私たちが、患者の生命と生活を支える医療者として丁寧に正していくことも大切なことですね。 

1)西村匡司, 丸藤哲:Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告, 日本集中治療医学会学会誌, 24,208-9,2017. https://www.jsicm.org/pdf/DNAR20170105.pdf(2019.8.6確認)

https://www.jsicm.org/pdf/DNAR20170105.pdf

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