〈KCCC文献紹介 第98弾:小児ARDSにおける腹臥位療法の効果を読み解く 〉

Casado-Flores J, et al. Pediatric ARDS: effect of supine-prone postural changes on oxygenation. Intensive Care Med. 2002 28(12):1792-6.

リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12447525

OBJECTIVE:ARDSと診断された小児において、仰臥位・腹臥位を反復することが酸素化に対する影響を調査する。

DESIGN:単施設前向き症例報告

SETTING:大学病院PICU

PATIENTS:P/F(PaO2/FIO2) ratio 200以下の小児ARDS患者

INTERVENTIONS:患者を8時間ごとに仰臥位・腹臥位を繰り返す

MEASUREMENTS AND RESULTS:

23名のARDS患者(生後0.5か月-12.6歳)に対し、ARDSと診断後56±109時間以内に腹臥位療法を開始した。腹臥位・仰臥位への体位変換を、8時間ごとに9.7±5.5日間繰り返した。

仰臥位および腹臥位ポジショニング中のP / F比の変化を評価した。酸素化がベースライン値より15%増加することを「ポジティブな変化」として定義した。そして、腹臥位療法時、酸素化の変化が15%を超えた場合、患者は「反応あり」として分類された。結果、18人の患者が「反応あり」群、5人が「反応なし」群に分類された。「反応あり」群は、仰臥位から​​腹臥位に体位変換されたときに、22%(91±33→112±43)のP / F比の増加を示した(P <0.001)。そして、「反応あり」群のP / F比は腹臥位から仰臥位への変換時に低下した。

本研究における、患者の死亡率は48% (11名)であった。そのうち「反応なし」群の80%が死亡、「反応あり」群は39%が死亡したが、有意差はなかった(P = 0.95)。

CONCLUSIONS:

腹臥位療法は、小児ARDSにおいて酸素化を改善する。

死亡率に関して統計的に有意な差は認めなかったが、腹臥位療法に「反応なし」群の80%が死亡、「反応あり」群は39%が死亡し、「反応なし」群の方が高かった。

私見:

「腹臥位療法、やっぱりいじゃん!」と思いませんでしたか?!今回は、本報告の批判的吟味をしていきたいと思います。

ARDSにおいては、5つの重要なポイントがあります。

1.ARDSの診断・重症度評価(画像・バイオマーカーなど)

2.ARDSの非侵襲的呼吸補助(NPPVなど)

3.ARDSの人工呼吸器設定(モード・設定、目標SpO2など)

4.ARDSの呼吸管理周辺(筋弛緩・腹臥位など)

5.ARDSの薬物療法・全身管理(薬剤・鎮静など)

これらのポイントのうち、本研究では腹臥位療法、つまりARDSの呼吸管理周辺について報告されています。

本文を見ていただければわかりますが、本報告では人工呼吸器モードや筋弛緩についてのCharacteristicsが報告されていません。単施設の研究であるため、人工呼吸器モードなどがlimitationになり得ると想像します。ARDSでは肺胞過膨脹と虚脱の混在が往々にして問題となりやすく、非同調や自発呼吸の弊害などに対する介入が必要不可欠です。つまり、腹臥位療法を支持するだけの十分なデータが揃えられていないことが分かります。

体位変換は看護師が中心となって行いますが、呼吸管理周辺だけに注目するのではなく、患者の全体像を包括的に捉え、comfortな療養環境を支えたいですね。

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