臨床では入眠ケアとしてどのようなことを実践されていますか?
重症疾患患者や侵襲の影響や薬剤の使用、医療者のケアなどによって、睡眠障害になることが言われています。ただ、看護ケアとしてどのようなケアが睡眠に有効かはまだまだ明らかにされていない状況もあるので、このような論文から臨床に活かせるケアを見つけていきたいなといつも感じています。
Pagnucci, N., Tolotti, A., Cadorin, L., Valcarenghi, D., & Forfori, F. (2019). Promoting nighttime sleep in the intensive care unit: Alternative strategies in nursing. Intensive and Critical Care Nursing, 51, 73–81.
リンク先:http://doi.org/10.1016/j.iccn.2018.11.010
【目的】
「非薬物的介入を実施することが、集中治療患者のストレス要因と睡眠の質に影響を与えるかどうか」を明らかにする。
【研究方法】
・研究デザイン:前後比較デザイン
・研究対象者:2016年11月~12月に集中治療室に入室した患者を対象とした。
患者の採択基準:挿管や気管切開していても意識がある患者(GCS>13、ラムゼイスコア:2~3)
集中治療室に2日間以上入室している
除外基準:神経障害、以前から睡眠障害を診断されている場合
・介入方法
1日目:いつも通りのケアを実施
2日目:2つの特定の介入を実施
①ヘッドホン使用して音楽を聞いてもらう
②トレーニングを受けた看護師によるラベンダー/レモンの香りのアーモンドオイルを使用した足や腕のマッサージ
・評価方法
2日間、以下の2つの指標に関して評価を実施した。
①ストレス要因の調査:Stress Factors in Intensive Care Unit Questionnaire” (SEDAICU)
ストレスの要因となる4分類(環境・知覚・感情・身体)、33項目から構成されている。
②睡眠の質評価:Modified Richards-Campbell Sleep Questionnaire” (Modified RCSQ)
質を評価する6つの項目(睡眠の深さ、眠りに落ちるまでの時間(睡眠潜時)、夜間の覚醒、
中途覚醒後に再度、入眠できたか、睡眠の質、騒音)から構成されている
【結果】
●研究参加者:74人の患者
●ストレス要因:睡眠に関連しそうなストレス要因
・「異常な音を聞く」(47人 63.5%)
・医療者の話し声やジョーク(51人 68.9%)
・「人々がベッドの周りで継続的に作業している」(53人 71.6%)
・「心配」(60人 81.1%)
・「眠れない」(47人 63.5%)
●介入前後での睡眠の質の変化
介入前
睡眠の深さ:32人(43.2%)が「浅い眠り」、23人(31.2%)が「やや浅い眠り」を経験
眠りに落ちるまでの時間(睡眠潜時)41人の患者(54.8%)が「眠ることができない」
夜間の覚醒:53人(71.6%)が夜間の覚醒を報告し、そのうち21人(28.3%)が再入眠ができなかった
睡眠の質:42人の患者(56.7%)が「悪い」
騒音:17人(23%)が「非常にうるさい」、22人(29.7%)
介入後
睡眠の深さ:20人(27.0%)が「やや深い」、10人(13.5%)が「深い」を経験
眠りに落ちるまでの時間(睡眠潜時)24人の患者(32.5%)が「すぐに寝付けた」
夜間の覚醒:中途覚醒する患者が減少し、ほとんどの患者が再度入眠することができていた
睡眠の質:34人の患者(45.9%)が「良い」
騒音:33人(44.8%)が「しずかであった」と報告している
【結論】
患者のストレスに対する認識を減らし、睡眠を改善する可能性があります。現在、さらなる研究が必要です。
【私見】
通常ケアの記載がなく、どのようなケアと比較したのだろうと疑問に思う。また、患者の重症度や緊急入室の有無、薬剤(睡眠薬使用を含む)の使用などの記述がないため、具体的にどのような対象者に有効だったのか判断することができないと感じました。ただ、ストレス要因にあるように「騒音」は患者にとって、ストレスにもなり、不眠の重要な原因になっていると思います。
他の研究で、音楽療法の効果について検証も進んでいると思います。入眠中の音楽やヘッドホンの使用は「騒音」を軽減する効果もあると思いますし、患者さんや家族さんの協力を得て実践しやすいケアになるんじゃないかと感じます。
【参考】
→ストレス要因の調査:Stress Factors in Intensive Care Unit Questionnaire” (SEDAICU) http://doi.org/10.1007/s001340050500
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