<KCCC文献紹介 第101弾 院内での尿道留置カテーテルの留置・抜去基準どうしていますか?>

 皆さんは、Choosing Wisely(チュージングワイズリー)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは、2012年に米国で発足した「過剰で有害かもしれない医療行為を見直して賢い選択をしていこう」という世界的な活動で、現在550項目以上の問題のある医療行為がリスト化されています。2016年には、Choosing Wisely Japanとして国内での活動も展開されています。

さて、本日はこのChoosing Wiselyにも挙げられている尿道留置カテーテルの留置・抜去に関する取り組みについて紹介していきます。https://www.commonwealthfund.org/publications/case-study/2019/may/choosing-wisely-recommendation-9

Don’t Place, or Leave in Place, Urinary Catheters for Incontinence, Convenience, or Monitoring in Noncritically Ill Patients

非重症患者の尿失禁、利便性、モニタリング目的のための尿道カテーテル留置や留置の継続はやめましょう。

背景

 入院患者が尿道留置カテーテルを使用している場合、動きやすさの低下、カテーテル関連感染症を引き起こす可能性があります。ここでは、入院患者に必要のない尿道留置カテーテルが挿入されることが多いというエビデンスを示します。尿道留置カテーテルを挿入している場合、患者や医療システムにとって高価で有害な尿路感染や血流感染などの合併症を避けるために、定期的に再評価および抜去する必要があります。 米国の研究では、不要と考えられる状況での尿道留置カテーテル挿入は半分以上だったと示されており、日本も同様の問題を抱えていると研究者によって考えられていました。しかし、いかに日常的にこれらが行われているかのデータは不足していました。Choosing Wisely Japan推奨の上位5つのリストには、医療提供者の利便性のためだけにカテーテルを留置しないという推奨事項が含まれています。

介入

 日本の5つの教育病院における尿道留置カテーテルの有病率を評価し、より適切なカテーテル使用のための戦略を設計するために8か月の研究を行った。研究者らは、患者日数からカテーテル使用日数の評価をおこない、ICU全体で合計3,177日が評価された。

対象 日本の5つの教育機関病院の5つの集中治療室に入院している入院患者、およびこれらの病院の医師と看護師。

介入内容

1.CDCガイドラインおよび不適切な尿道留置カテーテルの使用に関する基準を参考に、適切なカテーテル使用について看護師を教育した。

2.尿道留置カテーテルの不適切な適応に関する情報のポスターをICUに配置した。

3.尿道留置カテーテルの必要性を評価するために、毎日の入院患者ラウンド中に使用するチェックリスト(図.1)を開発した。

エビデンスの影響

 介入後、不適切な尿道留置カテーテルの日数は40%から15%に減少した。 臨床家は、不必要な尿道留置カテーテルを取り除いた場合に、患者が移動、歩行、および立ちやすさをどれほど容易にするかに気づいた。(※この研究結果は、2018年のCritical Care Congress(SCCM)で発表されている)

イノベーションの共有と普及

 研究者は、この研究により尿道留置カテーテルの有病率と減少に関する他の多くの研究に拍車をかけたと述べている。米国では、不必要な尿道留置カテーテルの使用を減らすための継続的な研究と大規模な実施努力がなされており、カナダではオンタリオ州の調査研究や関連ツールに基づいて「チューブをなくす」ツールキットが開発されている。

~詳細についてのお問い合わせ~ 栗山明医学博士、akira.kuriyama.jpn @ gmail.com

私見

 これは、筆者が所属している倉敷中央病院の救急医である栗山医師が発表した取り組みです。数年前にこの取り組みが開始されて以降、毎朝の回診で尿道留置カテーテルを含めた体内留置器具の妥当性についてディスカッションされるようになりました。もちろん、取り組みの開始当初は栗山医師による啓蒙活動がなされていましたが、今ではチェックリストに基づいた内容が文化として浸透して、不要な尿道留置カテーテルはどんどん抜去しようという風土が形成されています。コメディカルとしても、離床が容易になり、“排尿”という生活行動へのアプローチを検討・実施する機会になります。とても優れた素晴らしい活動だと筆者は肌で感じています。こういった取り組みが幅広くなされると良いなと素直に思います。

  Choosing Wisely 「過剰で有害かもしれない医療行為を見直して賢い選択をしていこう」…これは医療の様々な場面に転がっていると思います。新しいものを生み出すだけでなく、不要な介入を減らすという視点と思考も、医療とケアの発展には必要なのだと感じます。

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