〈KCCC文献紹介 第104弾:2時間毎の体位変換は伝統の技か、それともエビデンスか〉

皆さんの施設では、何時間ごとの体位変換を実施していますか?

当院では2時間ごとの体位変換を継続的に行っています。

入職からずっと変わらず、2時間毎の体位変換が行っています。新人時代から先輩から「ベッド上で動くことができない患者さんの体位変換は2時間毎にしないといけない。しないと、褥瘡を作ってしまう!!」と言われてきました。

当たり前のように2時間毎の体位変換を行っているのですが、

ふと考えた時に、この「2時間毎の体位変換」は現在にあったエビデンスに基づいたケアなのでしょうか?

2時間毎の体位変換をするため、その都度患者さんを起こすため、睡眠の妨げになります。

さらに、今は「圧切り替え型エアマット」を仕様しているので、

2時間毎の体位変換が言われた時代と比べると医療機器もずっと進歩しています。

医療機器が進歩していく中で、2時間毎の体位変換は先輩から後輩に引き継がれる伝統の技なのでしょうか?

それとも、エビデンスに基づいたケアなのでしょうか?

もう一度、そんなことを考え直してみたいと思います。

ご紹介する文献

Manzano, F., Colmenero, M., Pérez-Pérez, A. M., Roldán, D., Jiménez-Quintana, M. D. M., Mañas, M. R., et al. (2014). Comparison of two repositioning schedules for the prevention of pressure ulcers in patients on mechanical ventilation with alternating pressure air mattresses. Intensive Care Medicine, 40(11), 1679–1687.

リンク: http://doi.org/10.1007/s00134-014-3424-3

目的

「圧切り替え型エアマットを使用している人工呼吸器を装着した患者を対象に、2時間毎の体位変換は4時間毎の体位変換に比べて、褥瘡発生予防に効果があるか?」を明らかにすること

方法

【研究デザイン】 RCT

【研究対象者:選択基準】

・圧変動エアマットレスを使用している

・ICU入室時に褥瘡がない

・少なくとも24時間以上、人工呼吸器を装着している

・18歳以上の成人

【研究対象者:除外基準】

・圧切り替え型マットレスに乗っていない

・45kg以下、140kg以上(エアマットの仕様上)

・妊娠している

・ICU入室時にすでに褥瘡を保有している

【介入(Intervention:I)】2時間毎の体位変換を実施する

【対照(Control:C)】4時間毎の体位変換を実施する

*いずれも、トレーニングを受けた看護師によって体位変換を行い、最初は左側臥位30°、30°頭部挙上、右側臥位30°の順番に体位変換を行った。

*エアマットはHill-Rom社のTotal Care Duo2を使用している。

*鎮痛鎮静はフェンタニル+プロポフォールまたはフェンタニルのみを使用した

【主要評価項目(Outcome:O)】

ICU入室中のⅡ度以上の褥瘡発生率

【評価期間】研究登録からICU退室まで

【副次評価項目】

・体位変換スケジュールの実施率

・院内死亡率

・ICU死亡率

・人工呼吸器装着期間

・ICU在室日数

結果

無作為に2時間体位変換群:165名、4時間体位変換群:164名が割付られた。

【患者特性】

平均:62.1歳、性別:男性約66.1%、APACHEⅡ:23.4であり、介入群(2時間体位変換群)、対照群(4時間毎体位変換群)で有意差はみられていない。

【褥瘡発生率】

ICU在室中の褥瘡発生率は2時間毎の体位変換群で10.3%、4時間毎の体位変換群で13.4%であった。(未調整HR 0.89, 95%CI 0.46-1.71, P=0.73)と有意差はみられなかった。

【体位変換の実施率】

介入群:平均60.46±23.55%、対照群:平均61.03±22.36%と実施率に差はなく、体位変換ができない理由には、

循環動態が不安定、呼吸状態の悪化、患者の拒否などが挙げられていた。

【看護師の仕事量】

介入群:中央値21(IQR 14-27)分/日、対照群:中央値11(IQR 8-15)分/日(P<0.001)

結論

4時間毎の体位変換を2時間毎の体位変換に変更し、頻回に体位変換を行っても褥瘡発生率に変化はみられなかった。

また、2時間毎に体位変換をすることで、看護師の仕事量も増加する結果となっていた。そのため、2時間毎に体位変換をする必要はないことが示唆される。

私見

文献の結果からすると、「圧切り替え型エアマットに乗った人工呼吸器装着患者」に対して、4時間毎の体位変換と2時間毎の体位変換では褥瘡発生リスクに差がないため4時間毎の体位変換でいいことになります。

しかし、この論文を解釈する上で気をつけて頂きたいのが、

体位変換実施率が60%と介入群でも2時間以上のタイミングで体位変換を行っている可能性があること!

対照群(4時間毎)で、4時間以内に体位変換を行わなければならない状況があったかどうかに関する情報がないこと!

が挙げられます。

ということは、

必ずしも純粋に2時間毎の体位変換と4時間毎の体位変換を比べることができていない可能性が示唆されます。

また、対象となった患者の多くが心臓外科手術後の患者になり、外傷や脳神経系の患者はほとんど含まれていないこともなります。

こう考えると、この研究結果をICUに入室してくる患者全員に適応することは困難になると思います。

そのため、「4時間毎の体位変換が誰にでも当てはまる」とは言い難いことになります。

ただ、本研究の結果から「2時間毎と4時間毎の体位変換」で褥瘡の発生率に変化がなかったことも結果として得られています。

そのため、褥瘡予防には「2時間毎の体位変換が必要!」とも言えないと思います!!

現在、

National Pressure Ulcer Advisory Panel(世界褥瘡学会?)やヨーロッパ褥瘡学会の褥瘡予防ガイドラインでは、

「患者の状態に合わせて体位変換の頻度は調整すること」を推奨しています。

ですので、今後の研究結果や長期に体位変換を行わなくてもいいようなベッドが開発されることを期待しながら、患者の状態にあった体位変換の頻度をフレキシブルに調整し、個別性を持った介入が求められていると思います。

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