<KCCC文献紹介 第111弾 ICUダイアリーはPTSD症状改善に寄与しない!?>

Effect of an ICU Diary on Posttraumatic Stress Disorder Symptoms Among Patients Receiving Mechanical Ventilation A Randomized Clinical Trial

人工呼吸管理を受けている患者への心的外傷後ストレス障害症状に対するICU日記(以下:ICUダイアリー)の効果 RCT:無作為化比較試験

結果報告:https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2738291

研究プロセス報告:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5688734/

 ICUにいる間、患者の日記をつけていると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が軽減する可能性が指摘されています。今回の研究は、そのICUダイアリーがPTSD改善に寄与するのかを調査したRCTになります。

目的:ICUダイアリーが及ぼすICU入室患者への心理的影響を調査する。

研究方法:2015年10月から2017年1月までの35のフランスICUでの評価者盲検、多施設無作為化比較試験、2017年7月までの追跡調査をおこないました。少なくとも2日間のICU入室に該当する患者657人が無作為化され、339人がICU退院の3か月後に評価されました。

介入:介入グループの患者(n = 355)では、医療者と家族がICUダイアリーを記入しました。対照群(n = 354)の患者は、ICUダイアリーなしで通常のICUケアを受けていました。

評価項目:主要評価項目として、ICU退室後3か月の患者のPTSD症状をImpact Event Scale改訂アンケート(IES-R)で測定して評価しました。 IES-Rは、侵入症状、回避症状、および過覚醒症状などのPTSD症状を評価するための信頼性と妥当性の確認されたツールです。 各項目は、5点のリッカートスケール(0:まったくない、1:まれ、2:ときどき。3:頻繁、4:かなり頻繁)で評価しました。 合計スコアの範囲は0(症状なし)から88(重度の症状)までで、 測定の主な基準は22をカットオフとして用いられました。

グループ間で比較された二次的アウトカムとして以下が調査されました。

①家族のメンバーにおける有意なPTSD症状:不安とうつ病の症状は、不安に関する7つの項目とうつ病に関する7つの項目を有する自己管理病院不安とうつ病スケール(HADS)の検証済みフランス語版を使用して評価されました。各ドメインの合計範囲は0〜21です。7以下のスコアは正常と見なされます。 2つのサブスケールのそれぞれのカットオフスコアを8として、不安またはうつ病の重度の症状と定義しました。

②ICUの記憶想起:ICU滞在前および滞在中の患者の思い出を調査する項目で構成されており、PTSD症状が存在するかどうかを評価する2つの質問も含むICU記憶ツール質問調査票で測定しました。

③日記内容分析:ICUダイアリーの内容分析は、11人のメンバーによるDelphi法を用いて分析されました。6つのカテゴリが定義され、最も頻繁に表されるカテゴリとテーマを定量的に報告し、それぞれについて逐語的な例が示されました。

結果:無作為化された657人の患者(中央値[四分位範囲]年齢、62 [51-70]歳、女性126人[37.2%])のうち、339人(51.6%)が試験を完了した。3ヵ月後、有意なPTSD症状が介入群の患者164人中49人(29.9%)に対して報告されたのに対し、対照群の患者では175人中60人(34.3%)であった(リスク差、-4%[95%CI、-15%〜 6%]; P=0.39)。中央値(四分位範囲)IES-Rスコアは、介入群で12(5-25)vs対照群で13(6-27)でした(差、-1.47 [95%CI、-1.93〜4.87]; P=0.38)。6つの事前指定された比較二次結果のいずれにも有意差はありませんでした。

結論:ICUで人工呼吸管理を受けた患者の中で、医療者と家族が記入したICU日記を用いても、3ヵ月後に重大なPTSD症状を報告した患者の数は有意に減少しませんでした。これらの調査結果は、ICUダイアリーがPTSD症状の予防に寄与しないことを示しています。

私見: 1週間ほど前に、KCCC質問箱にICUダイアリーに関する質問が投稿されました。その際に触れた論文が今回の論文です。結果的に有意差はありませんでしたが、ICUダイアリーが良かったという経験も多くあるのではないでしょうか。個人として思うのは、ICUダイアリーというクローズアップされた方法だけが良いのではなく、その方略を用いることでスタッフが患者家族により興味関心を寄せ、その人を知ろうとして、自ずとコミュニケーションが促進され、現状認知が促されて、せん妄予防にも繋がり、良い写真や文章を残すために患者にとって個別性の高い意味のあるリハビリが実施きる。結果として、患者の妄想的記憶は徐々に補正されてPTSD症状も回避できる…。スタッフの意識や行動を変えるもしくは促進する一つのツールが『ICUダイアリー』なのではないかと考えています。

この記事をみていただいた皆さん、皆さんの経験や私見をKCCC質問箱に投げかけて教えてください!!有意差だけでは語られない何かが見えてくるかもしれませんね。

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