【コラム83:痛みの意味について】

 過去のコラム(コラム73 http://bit.ly/2nutax3)で、【トータルペインについて考えてみよう‼︎】という記事を書きましたが、本日はそのトータルペインにまつわる“痛みの意味”について考えていきます。

 痛みは、施設ごとに採用しているNRS、FS、BPS、CPOT、FLACCなどの疼痛スケールで定量的に評価されていると思います。スケールの得点が高いことで疼痛ありと判断されると、私たち医療者は積極的に排除すべきものとして介入していると思います。痛みが患者に及ぼす影響は多岐にわたり、ADLやQOLを阻害するので基本的には鎮痛が優先的に行われて然るべきです。ただ、ここでは、その定量的に測れるスケールやあなた自身のものさしとは少し違った“患者の捉える痛み”の理解について述べていきます。

 国際疼痛学会は、痛みを「実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験」と定義しています。この不快な感覚や不快な情動体験というのは、患者が主観的に感じる部分だと思います。これはNRSやFSなどのカットオフ値に限らず、患者が痛いもしくは不快だと感じれば、それは痛みだと捉えられるということです。そして、その逆もまた考えられるのではないかと思います。

 少し模擬事例で考えてみましょう。寛解と増悪を繰り返す慢性疾患により入退院を繰り返しているエンドオブライフにある患者がいたとします(ここでのエンドオブライフとは、患者・家族と医療スタッフが死を意識するようになった頃から始まる年単位に及ぶ幅のある期間を指します)。この患者は、現在ICU入室中ですが麻薬性鎮痛薬と鎮静薬を用いないと“耐え難い呼吸苦ないし痛み”が存在しています。しかし、患者は呼吸苦の軽減や鎮痛よりも、可能な限り覚醒していたいというニードをもっています。あなたは、本日その患者の受け持ちになりました。専門職者として、個人として、何を考え、どのような感情を抱くでしょうか?

 このような場面があったとして、少なからず医療者はジレンマを感じると思います。「なぜもっと苦痛緩和をしてあげないのか!!」「苦痛緩和が優先されるべきだ!!」など考え、もやもやとしながら受け持つことがあるかもしれません。このような時、筆者が何を考えるかというと、患者がその痛みや苦痛をどう捉えているのか、ということです。前述したように、疼痛スケールにより痛みや苦痛は定量的に測れますが、その痛みや苦痛がもつ意味までは測れません。単純に痛みは不快でしかないという患者がほとんどだと思いますが、時には“痛みや苦痛と戦っていることが最後まで病気と闘う自分なのだ”という強い信念を持っている患者もいます。あるいは、長年付き合ってきた病気だからこの苦痛も生活の一部なのだと捉えている患者もいるかもしれません。トータルペインでいうところのスピリチュアルペインともつながる部分ですね。

 さて、筆者が言いたいことは伝わったでしょうか?簡単にまとめると、「患者自身がもっている痛みや苦痛のものさしも、患者理解のための情報の一つとして活用してください」ということです。患者個々にあわせた看護実践をおこなうためにもこのような視点は必要だと感じます。

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