【コラム88:輸液シリーズ②】

日々、当たり前に輸液を投与していると思いますが、我々が患者に投与した輸液は、どこにいくのでしょう…?

当たり前のことを何言ってんだ?「血管(静脈)のなかに入って、循環している」に決まってるだろ!とお思いの方もおられるかもしれません。
たしかに、循環を良くするために投与される輸液ですが、細胞レベルで考えると、残念ながら血管内に留まることはむしろ珍しいこととも言えるのです。


以前のコラムでお話した、「ヒトはヤサイでできている」というお話(https://www.facebook.com/kansai.ccc/posts/2962206070474722)を思い出してみましょう。
ヒトの体液は、細胞内が8、間質内が3、血管内が1の割合で分布しているというやつです。
この割合をそのままに考えると、血管内に輸液が投与され血管内の水分量が増えるのであれば、間質や細胞内も比例して増えないとおかしくなる。…と、単純な考え方ではないのですが、血管内に増えた水分は、そのまま血管内に留まることはありません。


細胞膜は細胞を内と外に隔てる壁で、水が行き来する膜構造になっており、細胞内と細胞外は水の濃度が違っています。この濃度勾配によって水が動き(濃度が低いところから高いところへ水が流れる)、内と外の濃度がそれぞれ一定になるように働いています。
https://m.youtube.com/watch?v=JeACRw5lvm0

このような特性をふまえ、循環血漿量を維持するために血管内に水を留めておきたいと考えると、(血管は細胞外に存在しているので、)細胞外液と同じ濃度の水を投与すると良いわけです。


この細胞外液と同じ濃度の輸液が、いわゆる「外液(ガイエキ)」といわれる晶質液です。ちなみに、ガイエキの代表格である生理食塩水の「生理的」とは、「細胞外液と同じ濃度」ということです。この濃度は、ナトリウムで規定されていて、数多ある晶質液(ガイエキ)のナトリウム濃度は、ほぼ同じに組成されています。


ここで、ヤサイを思い出しましょう。細胞外に存在しているのは、間質と血管でした。そして、間質と血管の割合は3:1。したがって、静脈内に投与された晶質液(ガイエキ)は、1/4が血管内に留まります。つまり、血管内に500mlの水を留めさせたければ、500×4(3+1)=2000mlの晶質液(ガイエキ)が必要になるわけです。ちなみに、ブドウ糖液などのナトリウムが含有されていない輸液は、8:3:1の割合で血管の外に流れ出るので、500mlの水を留めさせるためには、500ml×12(8+3+1)=6000mlの輸液を投与せねばならなくなります。単純に3倍の水が必要になるということ。細胞の外に貯まった水を浮腫というのですが、それだけ沢山の浮腫があると患者にどんな影響があるのかは、想像するのも簡単ですね。


と、ここまではグダグダと理論的な体液分布&輸液投与について述べましたが、実は、輸液後の体液分布は、こんなに単純ではないのかもしれない…ということが分かっています。
次回では、その単純ではない輸液後の分布の仕方についてお話しさせてもらいますが、そこを理解するためにも、晶質液と血管内液の関係性は頭に入れておく必要があります。

画像引用元:https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02886_11

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