<KCCC文献紹介 第118弾:ICUでの身体拘束に影響しているものは…?>

【紹介論文】

桑原美弥子, 飯島佐知子(2018) 集中治療室における身体拘束率に関連する要因 -患者看護師比と業務量に着目して-. 順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 14(2), 19-29.

http://www.nurs.juntendo.ac.jp/file/iryokangokenkyu14_2_03.pdf

【アブストラクト】

目的:

本研究の目的は国内のICUにおける身体拘束率を明らかにすること、および身体拘束率と患 者看護師比との関連を、看護業務量を考慮して検討することである。 

方法:

全国の特定集中治療室管理料算定病院のICU師長462名を対象に無記名自記式調査票を用いた横断調査を実施し、量的分析をおこなった。

結果:

回収数は116部であった(回収率25.1%)。身体拘束率は28.8%、1000患者日数あたりの身体 拘束数は4.61であった。患者看護師比と身体拘束率に有意な相関は認められず、患者看護師比の高低 による身体拘束率の差を認めなかった。重回帰分析の結果、身体拘束率と有意に関連する要因は人工 呼吸患者割合および統一された身体拘束手順の使用であった。

考察:

国内ICUの身体拘束率は諸外国と類似しており、海外同様、一般病床よりも高いことが示唆 された。患者看護師比と身体拘束率に関連が認められなかった一因として、身体拘束実施の選択の任 意性の関与が考えられた。重回帰分析においては、従来指摘されていた人工呼吸に加え、統一された 身体拘束手順の使用が身体拘束率に関連していることが明らかとなり、統一された身体拘束手順の導 入が身体拘束実践の適正化に果たす役割は大きいと考えられた。

【私見(論文の解説めいたもの)】

今回ご紹介するのは、ICUのなかで行われている身体抑制に関連する要因について全国調査した研究です。いわゆる紀要論文ではあるのですが、日本で調査されたICU内の身体抑制に関する研究として数少ない論文であり、議論の題材としては十分だと思うので、ご紹介させてもらいます。

身体抑制についての議論をするとき、マンパワーの問題が話題となるのですが、今回ご紹介する研究も「看護師のマンパワー」について調査されたものです。本文の研究背景(p.20)にも書かれているとおり、看護師の数と身体抑制との関連性については依然として結論には至っていないものの、今回の研究では、「看護師の数は身体抑制の割合と関連していなかった」という結果になっています。このことは、集中治療医学会看護部会が行った研究(Unoki et al., 2019)の結果とも同様であり、「日本のICUでの身体抑制」という文脈では一定の説得力があるように思えます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6328904/pdf/AMS2-6-68.pdf

 アンケートの回収率の低さや解析モデルの正確性など、結果の読み解き方に考慮すべきことがあるとはいえ、この研究から考えさせられることは多くあります。

 例えば、看護師の数は身体拘束と関連していなかった反面、看護必要度やせん妄患者の割合、人工呼吸患者の割合などが関連していた(表2:単変量解析、いずれも相関係数は低い)という結果は、看護師の数ではなく、「忙しさ」や「危なっかしさ」が身体抑制の決定に影響するのかもしれないということです。このことは、肌感覚でとても納得がいく反面、適正な人員配置はどうすればよいのだろう?という疑問がわいてきます(常に忙しいわけではなく、時と場合によって忙しくなるときに、どうやって看護師を配置すればよいのか?)。

 また、「いま以上身体拘束を減らす必要はない」と考えている看護管理者(師長)が1/4もいたという結果は、一見、「けしからん‼」と考えてしまうかもしれませんが、もしかすると、その管理者たちがいるICUは「既に理想的な身体拘束に対する取り組みができている」のかもしれない、とも考えられます。となると、そういったICUの実態を知りたくなったり…。

他にも、「統一された身体拘束手順の使用が身体拘束の割合を減らすことに繋がっていた」という内容が示されていますが、この手順はどのような内容だったのか?(ガイドラインで示されている手順のように、身体拘束の必要性を吟味し続ける内容になっていたのか?盲目的に手順に従うことが、本当に身体拘束を予防することになるのか?)などなど…。

 身体拘束の予防には、これ‼という決まった方法があるわけではないことは前提として、今回の研究のような実態調査から見えてきたことをどのように活かすのか、いろいろ考えさせられますね。例えば、「身体拘束をするか/しないか」悩んだ場面を共有するだけでも、明日からの実践が変わるかもしれませんね。

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