重症疾患に罹患するすることは、集中治療室から生存し退室した後も様々なリスクを背負っている。Post Intensive Care Syndrome(PICS)はその一つになる。集中治療の結果、疾患そのものは治癒したが、認知機能障害や身体障害が生じることで社会復帰に難渋することがある。

それだけではなく、社会復帰の過程で症状が悪化し、再入院に至るような「症状の再燃や重症化」のケースも少なくないように思う。欧米では、日本よりも在院日数が短く、在宅でのサポートが重要になるのだろうか。では、入院中からそのような患者に対してどのようなケアができるのだろか?集中治療から在宅へのシームレスな移行を進めていくために、ケア提供を行っていくことが必要になるのだろうか!?

→「ABCDEFバンドルの実施と入院中の患者アウトカムに関する調査」 記事リンク

Bloom, S. L., Stollings, J. L., Kirkpatrick, O., Wang, L., Byrne, D. W., Sevin, C. M., & Semler, M. W. (2019). Randomized Clinical Trial of an ICU Recovery Pilot Program for Survivors of Critical Illness*. Critical Care Medicine, 47(10), 1337–1345. 

URL:http://doi.org/10.1097/CCM.0000000000003909

【背景】

重症疾患に罹患するすることは、集中治療室から生存し退室した後も様々なリスクを背負っている。集中治療室入室時から様々なケアを行っているが、集中治療室から実施できる様々なケアを複合的に実施することで、病院を退院後も再入院リスクを低下させることはできるのだろうか?!

【方法】

■研究デザイン:RCT

■研究場所:Vanderbilt University Medical Center

■研究対象者(P):集中治療室に48時間以上入院し、30日再入院リスクが15%以上と予測された成人患者

■介入群(I):体系的な10個のICU回復プログラムを実施

■介入方法

=ICUリカバリープログラム=

入院中の介入

①患者訪問

②パンフレットの配布(PICS・ICUケアプログラム・PICSの治療に必要な社会資源の情報提供)

③薬剤師による初期の薬剤調整(常用薬の確認、現状に合った薬剤を医師と調整)

退院後の介入

④ICUリカバリープログラムチームの連絡先を提供(電話番号・メールアドレス)

ICUリカバリーセンター

⑤NPの評価

⑥薬剤師による薬剤調整

⑦神経認知評価

⑧ケースワーカーによる生活状況の評価

⑨多職種による治療計画の検討(6分間歩行や呼吸機能検査の結果をもとに、

 多職種でケア計画の検討)

⑩必要な専門家の紹介

※ICUリカバリーセンター

患者/家族を対象に、退室後のケア調整を行い、在宅への移行をスムーズに行っていくためにメンタルヘルスや認知リハビリテーションを提供するクリニック。所属している職種:医師、集中治療ナースプラクティショナー、精神科医、集中治療専門薬剤師、ケースワーカーなど

https://www.icudelirium.org/the-icu-recovery-center-at-vanderbilt

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■対照群(C):通常ケアを実施している

■評価(O)

①主要アウトカム

ICU回復プログラムの実施率

②二次的アウトカム

退院30日以内の同病院へのへの再入院率

③三次的アウトカム

・退院から再入院までの日数

・退院から30日以内の死亡および退院から死亡までの日数

・退院から30日以内の死亡または再入院した対象者

・30日以内の再入院しなかった日数

・ 退院後30日以内の救急科来院の有無

・退院後30日以内の外来診療の有無、退院から外来診療までの日数

【結果】

■研究対象者の対象者属性:有意差はない

介入群:111名

対照群:121名

■介入の実施状況

=入院中=

介入群:60%以上の患者が入院中に2つまたは全ての介入を受けていた

対照群:約50%の患者が薬剤調整を受けている

(ICU訪問やパンフレットは配布していない)

=退院後=

介入群:9名(8/1%)利用

対照群:利用なし

=ICUリカバリーセンター=

介入群:介入群:9名(8/1%)利用

対照群:利用なし

■再入院率

介入群:16人(14.4%)

対照群:26人(21.5%)(p=0.16)

■再入院までの期間(中央値:median)

介入群:21.5日(四分位範囲:11.5~26.2日)

対照群:7日(四分位範囲:4~21.2日)(p = 0.03 )

■退院後、7日以内に再入院した対象者数

介入群:4人(3.6%)

対照群:14人(11.6%) (p = 0.02)

■退院後30日以内の死亡または再入院した対象者数

介入群:20人(18%)

対照群:36人(29.8%) (p = 0.04)

【結論】

介入を行うことが再入院率を低下させる結果ではなかった。しかし、NPや薬剤師などが介入を行うことにより、再入院までの期間が延長されることが示された。

【私見】

論文の論点からはズレるかもしれないが、「集中治療室から在宅を考える」必要性について改めて考えるきっかけをもらったように思う。入院期間の短縮化、地域医療への転換など医療の転換期の中で「集中治療は集中治療」、「病棟は病棟」といったセクションで区切って考えるのではなく、理想論かもしれないが「集中治療から在宅までシームレスに関わることができる」人材や部署の必要性を強く感じる。そういう意味で、「ICUリカバリーセンター」というのはとても面白い取り組みだなと思いました。ただ、日本で同じことがすぐに始めることは、マンパワーだけではなく、診療報酬の問題も絡んでくるので、こういった研究を参考に、世界の動向をみていくこと・導入を検討していくことが大切かなと思います。

本研究は「電話・メールでのサポート、ICUリカバリーセンター」の利用率が8.1%と低い部分もあった。そのため、再入院率を改善するには至っていない。パイロット研究のため、退院後のサービスの利用率が伸びなかった理由や他のサービス提供方法などについても検討していく必要があるだろう。

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