<KCCC文献紹介 第126弾「ICU入室患者は眠りたくても眠れない?」>

 寒い冬が到来し、毎朝布団から出るのが辛い時期になりましたね。しかし、その反面なぜか夜は熟睡できるようになったような気がするのは私だけでしょうか?人間が唯一疲れを癒して体力を回復するのが睡眠であると言われています。皆さんは日々関わっているクリティカルな状態にある患者に対して睡眠の観察と評価、介入は行っていますか?少し前の文献ですが、ICU入室患者の睡眠不足の体験が記載されている物がありましたので、ご紹介させていただきます。

【文献】

Agness C. Tembo,Vicki Paker,Isabel Higgins(2013) The experience of sleep deprivation in intensive care patients:Findings from a larger hermeneutic phenomenological study. Intensive Crit Care Nurs. 29(6):310-6

【タイトル】

集中治療患者における睡眠不足の経験:解釈学的現象学研究からの発見

【序論】

睡眠不足とは、時間の経過と共に身体的・精神的疲労が回復する睡眠が欠如していることが特徴とされている。重症患者の睡眠不足は30年以上にわたり十分に実証され、睡眠不足を緩和するための要因や治療法が広く研究されている。重症患者の睡眠不足の原因は、「騒音」「痛み」「不快感」「換気様式」「ICUで使用される多くの薬物」であるとされている。鎮痛・鎮静は、患者の快適さ、患者および人工呼吸器の相互作用の改善、痛みおよび不安の軽減、および自己負傷のために主に使用されているが、鎮痛・鎮静の累積効果は、人工呼吸器離脱を遅らせる可能性があると共に、鎮静は、ICU滞在期間の延長、せん妄、PTSDのリスクを高めるとされている。Daily sedation interruption (DSI):毎日の鎮静中断は、これらのことを緩和する目的に実施されているが、長期的な影響や患者への影響はほとんどなく、患者へのメリットの観点から使用をめぐる議論は未解決である。

【研究目的】

DSI(毎日の鎮静中断)を用いたICUにおける重症患者の経験と、これが参加者の存在にどのように影響したかを記述すること

【研究方法】

■研究デザイン:解釈学的現象学によって導かれた質的なデザイン

■研究対象者:12名

■データ収集方法

インタビュー時期: ICU退室2週間後、6~11ヵ月後

インタビュー時間:30分~1時間45分

インタビュー中は参加者の非言語的手がかりをノートに記録し、インタビューから新たな情報が得られない時点でデータ収集の限界とした。

■データ分析方法:選択的なハイライト手法でインタビューを分析し、ICUにおける生きた体験であるフレーズと文章を探した。その中から、重要なフレーズと強調された文章をクラスタ化し分類、テーマを抽出した。

【結果】

■抽出されたテーマと特徴的な経験

「通常の睡眠に憧れている」

ICU退室2週間後のインタビューで一部の参加者は、ICUでは周りで人々が死にかけており、彼らもまた危険にさらされていると考えていたため眠れなかったと話した。参加者のI氏は「私の周りの人々は基本的に死んでいたので、私は眠れませんでした。」と話し、彼にとって眠ることはICUにおいて死を意味することを連想させた。彼の唯一の手段は目を覚まし、死が彼らに近づかないように徹夜を保つことであった。

「悪夢に苦しんでいる」

ICU退室6ヵ月後のインタビューでE氏は毎晩の悪夢でICUの経験を傷つけられていると話した。「それは夢の中にやってくる。私はベッドに縛られ、チューブに囲まれている。眠っている時も本当に静かな時はモニター音が鳴る。これがいつ終わるのかわからない。」と話し、E 氏にとって夜の沈黙は執拗に恐ろしいものであり、ICUのモニター音が聞こえICUにいるようだったと語った。

【結論】

この研究は、ICUにおける重症疾患の様々な段階で患者が睡眠不足を経験し続けていることを示している。

研究結果は、安らかな睡眠をサポートし、睡眠不足および悪夢を予防・緩和しようとするモデルの必要性を示唆している。

【私見】

 2018年9月にSCCMからPADISガイドラインが発表され、2019年11月には日本語訳版も日本集中治療医学会から発表されました。この中で私が注目しているのはsleepにも焦点が当てられたということです。PADISガイドラインではICU入室患者の睡眠を妨げる要因として、「環境因子」「生理的・病態生理学的要因」「ケア関連因子」「心理的因子」が挙げられています。今回ご紹介させていただいた文献では、ICU入室中の睡眠不足の経験だけではなく、ICU退室後・退院後まで睡眠不足を経験していることが明らかになっています。この患者の睡眠不足の経験の語りを見てみると、PADISガイドラインに記載されている「心理的因子」の中でも、不安・心配・ストレス、恐怖、不慣れな環境、時間感覚の喪失、孤独感などが該当するかと思います。この研究から、普段私たちが客観的に観察・評価を行っているICU入室患者の睡眠不足の体験を知ることで、睡眠不足を改善する介入の一助となると考えられます。

 皆さんは、ICU入室患者の睡眠不足について考えたことはありますか?また、それを改善する取り組みはしていますか?今回の文献紹介の内容を踏まえて、また機会があれば私の所属施設のICUで行っている睡眠に対する看護ケアについて紹介したいと思います。

画像引用元: http://theconversation.com/who-needs-to-be-in-an-icu-its-hard-for-doctors-to-tell-56728

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