<KCCC文献紹介128弾:ICUの中では緩和ケアプログラムの影響が及ばないのか…?>

先日投稿した、ICUにおけるモラルディストレスについての記事(http://www.facebook.com/1187559671272713/posts/3168739566488037/)には、たくさんの方が共感されたようです。ICUで行われる無益な治療(futile care)についても皆さんと議論をさせてもらいたいところですが、今回は緩和ケアがICUに及ぼす影響について調査した研究のご紹介をさせてもらいます。

Andrew MR, Kristive EG, Gradon N et al.(2107) Early palliative care reduces End-of-Life Intensive Care Unit(ICU) use but not ICU course in Patients with Advaned cancer. The Oncologist, 22; 318-323.

『早期の緩和ケアは、進行がん患者の終末期としてのICU利用を減らすが、ICUに入ってからの影響はない』

文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5344633/pdf/onco12023.pdf

■背景

進行がん患者に対する早期緩和ケアの導入は、患者のQOLや生存率を改善するが、終末を迎える患者のICU入室への影響については、よく分かっていない。本研究では、進行がん患者におけるICUの利用およびその他の結果に対する、包括的早期緩和ケアプログラムの効果を評価した。

■方法

早期緩和ケアプログラムに登録された進行がん患者(n=275)と同期間に標準治療を受けたコントロール群(n=195)を、後方視的多変量ロジスティック回帰分析を用いて比較した。本研究の対象施設で行われている集学的外来緩和ケアプログラムでは、早期の終末期ケア計画や毎週の集学的会議を行って患者の状態を議論し、電子カルテ上の患者アウトカムを評価している。

■結果

コントロール群の患者は、終末期のICU入室が有意に高く(OR:終末の6ヶ月以内

=3.07、1か月以内=3.59、終末状態としての入室=4.69)、院内死亡の割合(OR=4.14)やICU内死亡の割合(OR=5.57)が高かった。一方で、ホスピスへの移行は少なかった(OR=0.13)。化学療法や放射線療法が行われた割合やICU在室日数、急変時の対応、(心肺蘇生を除くICU内での処置)、転出先、ICU入院後のアウトカムなどに有意な差はなかった。

■結論

早期緩和ケアは、終末期におけるICUの利用を大幅に削減するが、ICU入室後のイベントには影響していなかった。

私見:

本研究でもそうであったように、緩和ケア(Palliative care)は「がん」の文脈で語られることが多いのですが、満席疾患は必ずしも「がん」に限ったことではありません。例えば、心不全の緩和ケアなどはクリティカルケアの中でも注目を集めています(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_nonogi_h.pdf)し、腎臓疾患の緩和ケアも以前から課題となっています。ELNEC-Jが注目されているように、クリティカルケアのなかでも緩和ケアはホットな話題です。

本研究は、そんなクリティカルケアの領域で緩和ケアを頑張っておられる人にとって、ある意味で「がっかり」な結果を示すような報告かもしれません。この研究の結果を「いくら緩和ケアを頑張っても、ICUに入っちゃうと関係ないんだよ…」というネガティブなメッセージとして捉えるか、「じっくりと練られた緩和ケアは本人の思いを尊重する」とポジティブに捉えるかは、読者の感性・経験におまかせします…。

 このような数字で示される結果の背景には、そこで働く医療者の葛藤や患者・家族のやりきれない思いなどが複雑に絡み合っています。ICUに入る前と入った後で、ケアのカタチが変わってしまう背景には、医療者の価値観がまとまっていない現状も影響しているでしょう。医療技術の進歩は、ケアの選択肢を増やすと同時に価値観も多様化させました。「できるんだから全力でやる」は、文脈によって正義にも悪にもなり得ます。まず、大切なのは「その人のための最善のケア」について話し合い続けることではないでしょうか。

画像引用元:https://time.com/tag/marijuana/

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