コラム120:それでも食べたい、お餅

みなさんは、お餅は食べましたか?この時期にはお餅が欠かせませんよね。

餅は弥生時代頃からあったと言われており、奈良時代には、正月には鏡餅として歳神様に供えられてきました。
お雑煮は、正月のお節料理に欠かせないものですね。本来は供えた後の餅を野菜などと一緒に調理する風習からできたもので地域特有の味付け・内容があり、家庭ごとに少しずつ異なっており様々な味を楽しむことができます。

一方で、高齢者の餅による窒息が毎年この時期にはニュースになります。 消費者庁からも注意喚起が出されており、人口動態調査から65歳以上を対象に調査したものによると「誤嚥等の不慮の窒息」がやや減少傾向にはありますが、最も死亡者数が多い事故になります。

自宅などの住宅等居住場所からの救急搬送が約90%を占め、そのうち軽症で済んだのは50%以下という報告もあります。
餅は粘稠度が高く、一度窒息すると喉にはりついてしまい除去することが困難となります。そのため自宅で窒息してしまうと、救急要請しても時間を要してしまい低酸素脳症を起こし救命できても重篤な後遺症が残ることもあります。
河原らの報告では、救急隊到着までの反応消失前に異物除去(腹部突き上げ法など)をされた症例はなかったと報告しています。
現在では、腹部突き上げ法や背部叩打法が有効であるとされており、救急隊が到着する前に窒息があればすみやかに実施することが推奨されています。

なぜ餅を詰まらせてしまうのか?

・オーラルフレイルによる嚥下機能低下 嚥下機能低下もありますが、薬剤による唾液分泌能低下や口を閉じることが困難となり(義歯の不着用、筋力低下による口唇を閉じることができず常に開口している)、口腔内が乾燥してきます。乾燥により食塊の滑りが悪くなり飲み込みができにくい口腔内状況になることもあります。

「コラム63:重症患者にもオーラルフレイルあると思います!」
http://kansai-ccc.jp/2019/08/20/%e3%82%b3%e3%83%a9%e3%83%a063%ef%bc%9a%e9%87%8d%e7%97%87%e6%82%a3%e8%80%85%e3%81%ab%e3%82%82%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%a9%e3%83%ab%e3%83%95%e3%83%ac%e3%82%a4%e3%83%ab%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%a8%e6%80%9d/

・物性の違い
同じ食べ物の中に異なる物性のものがあると嚥下するタイミングがそれぞれ違う。
お雑煮では、汁(液体)、人参など(固形)、餅(高粘度)と様々な物性が混ざっています。咀嚼が必要なものと液体が同時に口腔内に入ると、液体を飲み込むタイミングで咀嚼しきれていない食塊も流入してしまいます。

・その他
食事する姿勢:円背があると前を見ようとして自然と顎が上がってしまい、頸部が後屈する姿勢となり誤嚥しやすい体位となってしまいます。
義歯:餅は粘度が高いため義歯が外れやすくなってしまう。固定ができていないと義歯を装着しないまま摂取し、噛み切れず餅を大きい状態で嚥下してしまうと窒息のリスクが高くなります。

餅による窒息事故を防ぐために(消費者庁ホームページより)

(1)餅は小さく切っておく
(2)餅を食べる前に、先にお茶や汁物を飲んで喉をうるおしておく
(3)餅はよくかんで、唾液とよく混ぜ合わせてから飲み込む
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_181226_0001.pdf

これに加えて、
(4) 物性が違うものは別々に食べる
(5)歯の手入れ(義歯も含む)
(6)誰かと一緒に
(7)飲み込みに自信がないときは、食べないのも一つの窒息予防手段

正月に餅を食べるなら、リスク回避も大事。それでも食べるなら誰かと一緒に。 だって日本の伝統食だもんね、そりゃ食べたいよね。

参考文献
1)河原弥生 他: 目撃のある気道異物による窒息症例50例の検討. 日救急医会誌, 20(9), 755-62, 2009

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