<KCCC文献紹第133弾:重症患者に対する膠質液、「現段階では」疑わしくは控えろ?>

Lewis SR, Pritchard MW, Evans DJ, et al.(2018) Colloids versus crystalloids for fluid resuscitation in critically ill people. Cochrane Database Syst Rev. 3;8:CD000567

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6513027/

■背景

 重症患者は、血液の大量喪失や(外傷や火傷など)、重篤な状態(敗血症など)に陥ることがあり、そのような状態の患者に対して、脱水や腎不全を防ぐためは緊急の補液が必要となる。膠質液や晶質液は循環血漿の置換液であり、主に輸液ルートを介して静脈内に投与される。

晶質液は、低分子・低コストの塩溶液(生理食塩水など)で、体内に投与後速やかに体液として体内に広がり得る。膠質液の溶質は、人工由来(澱粉やデキストラン、ゼラチンなど)または自然由来(アルブミンまたは新鮮凍結血漿(FFP)など)であり、分子量が大きいため、投与後も血管内に長時間留まる。膠質液は晶質液よりも高価である。輸液が必要となる重病患者に対して、膠質液を投与することが晶質液の投与よりも優れているのか、輸血が必要になるのか、腎代替療法が必要になるのかは不明なままである。

■研究の特徴

 本研究結果は2018年2月現在のものである。医学文献を検索し、緊急時に院内または院外で輸液投与を受けた30,020人の重症患者を含む69件の関連研究を抽出した。その上で、膠質液(澱粉製剤、デキストラン製剤、ゼラチン製剤、アルブミン製剤またはFFP)と晶質液を比較した。

■主な結果

 死亡者数に視点をおいて分析をしたとき、晶質液と膠質液(澱粉製剤;デキストラン製剤;アルブミン製剤またはFFP)を比較すると、30日死亡数、90日死亡数または研究終了までの期間の死亡数には、ほとんどまたは全く差がないという中程度のエビデンスが明らかになった。同様に、ゼラチン製剤と晶質液を比較した場合では、これらの各時点での死亡者数に“ほとんどまたはまったく差がない”という低い精度のエビデンスが明らかになった。

 輸血の必要性に視点をおいて分析をすると、デンプン製剤は晶質液と比較したときに、輸血の必要性がわずかに増加するという中程度のエビデンスが明らかになった。一方で、デンプン製剤以外の膠質液では、エビデンスの精度が非常に低いため、晶質液と比較しても輸血の必要性の差は明らかでなかった。

 腎代替療法に視点をおいて分析をすると、水分の補充としてデンプン製剤を用いると、晶質液と比較して、腎代替療法の必要性がわずかに増加するという中程度のエビデンスが明らかになった。同様の比較として、アルブミン製剤またはFFPを用いた場合は、腎代替療法の必要性は“ほとんどまたは全く変わらなかった。ゼラチン製剤と晶質液を比較した研究が1件あったが、輸液の種類ごとの腎代替療法の結果は報告されておらず、デキストラン製剤と比較した研究でも腎代替療法は評価されていなかった。

 その他の有害事象(特に、アレルギー反応、かゆみ、発疹など)を報告した研究はほとんどないため、総じて考えると、どちらの輸液が有害事象を引き起こすのかは不明である(非常に低い精度のエビデンス)。これら少ない研究の中でも、アレルギー反応としては、澱粉製剤と晶質液を比較した場合に、ほとんどまたは全く差は見られなかったが、晶質液が投与さられた対象者は、かゆみや発疹があったことを報告した。デキストラン製剤(4つの研究)、ゼラチン製剤(1つの研究)、およびアルブミン製剤またはFFP(1つの研究)を用いた場合に、アレルギー反応としては、晶質液と比較しても、ほとんどまたは全く差がなかった。

■エビデンスの精度

 一部の研究者は、研究方法を明確にしておらず、多くは研究開始前に研究を登録していなかったため、それらの研究結果が結果を見る前に決定されたのか後に決定されたのかは明らかでない。また、晶質液を投与された一部の対象者は、膠質液も投与されている可能性があり、結果に影響を与えているかもしれない。いくつかの結果については、非常に少数の研究しかなかったため、エビデンスに対する信頼性が低下した。

■結論

 体液置換のために晶質液と比較して晶質液(澱粉製剤; デキストラン製剤; アルブミン製剤またはFFP)を用いても、重病患者の死亡数に差はなかった。ゼラチン製剤または晶質液を輸液に使用する場合も、死亡数にほとんどまたは全く差はなかった。

デンプン製剤は、輸血と腎代替療法の必要性をわずかに増加させる可能性がある。アルブミン製剤またはFFPを用いても、腎代替療法の必要性は、ほとんどまたはまったく変わらない可能性がある。デキストラン製剤、アルブミン製剤、FFP、晶質液が輸血の必要性に影響するかは不明である。同様に、膠質液または晶質液が有害事象を増加させるかどうかは不明である。現在も膠質液の有効性についての研究は進行中であり、将来のエビデンスに対する信頼を高める可能性がある。

【私見】

 敗血症性ショックの患者や重症熱傷の患者など、体液の相対的な喪失が著しい病態を呈する場合、患者の生命を維持するために大量の輸液投与が必要になります。つまり、「足らなきゃ入れりゃ良いでしょ」というごく単純なことです。そう、“その場を凌ぐこと”だけが目的なのなら…。

 当たり前のことですが、患者の命は、その危機を脱した後にも続きます。だからこそ、われわれ医療者は、その時その時での最適解を探し続けているのだと思うのです。なりふり構わずその場を凌ぐのではなく、いかにその場を凌ぐのか?ということです。重症患者の輸液管理でいえば、患者の命をつなぐためには大量の輸液が必要。でも、入れる量は少ないに越したことはないわけです。となると、いかに輸液量を減らすことができるか?を考えます。

 血管内から滲み出やすい晶質液を使うと大量の輸液が必要になるので、膠質液を使いたい(コラム108:https://www.facebook.com/1187559671272713/posts/3112694238759237/)。でも、膠質液の代表格であるアルブミンは使いにくい(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjtc/64/6/64_700/_article/-char/ja)。そこで出てきたのが、人工膠質液です。そして、今回ご紹介した文献では、その人工膠質液の有用性を検証しました。結果をあえて単純にまとめると、「人工膠質液も疑わしいので、積極的には使うない方が良いだろう」です。

 ただ、この結論も、「現段階では」というものです。人工膠質液の有効性の検証については、複数の研究で現在進行中です。そして、人工膠質液自体も進化しています(現在、第3世代まで認可されている。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/52/5/52_219/_pdf/-char/ja)。

「重症患者の大量輸液問題は晶質液じゃないとダメだから仕方ない!」と決着をつけるのは、まだまだ速そうですね。

saline solution in vignette style and blank area at left side

画像引用元:https://www.health.harvard.edu/blog/drip-bar-should-you-get-an-iv-on-demand-2018092814899

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