<KCCC文献紹介134段:心理的フレイルに気をつけるべき、その理由>

今回は「心理的フレイル」についてご紹介したいと思います!

皆さんは「心理的フレイル」と聞くと、どんなイメージをしますか?!

「あれっ?! フレイルって運動機能の低下のことではないの?、心理的ってなんだろう…。」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

フレイルとは「加齢に伴う予備能力の低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」と表現されることが多く、この回復力が低下した状態によって、機能障害や要介護状態・死亡などに陥りやすい状態になると言われています。

特に集中治療では、身体的に回復していく部分に着目される部分も多く、筋肉量が低下したり、運動器の低下を示す「身体的フレイル」が共通言語になりつつあるように感じます。(身体的フレイルの中で、口腔機能の低下に着目した「オーラルフレイル」も含まれます。)

そのため、「心理的フレイル」といってもピンと来ない方もいるかもしれません。

しかしながら、「心と体」が繋がっているように、「心理的フレイル」も予備力の低下に影響を与えている可能性があります。

今回は、この「心理的フレイル」に着目した国内文献をご紹介します。

今回ご紹介する文献

Prevalence of Psychological Frailty in Japan: NCGG-SGS as a Japanese National Cohort Study. Journal of Clinical Medicine, 8(10), 1554. 

URL:http://doi.org/10.3390/jcm8101554

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【背景】

身体的フレイルが要介護状態の予備群になりうる根拠は明らかになっているが、心理的フレイルの予後については不明であった。

【研究方法】

研究デザイン:前向きコホート研究

研究対象者:愛知県大府市の65歳以上の住民5,104人に依頼

除外基準:脳卒中・認知症・うつ病などの既往がある

研究期間:平均49.2±9.4カ月を追跡

評価項目:

●基礎疾患の有無

●歩行速度、握力、身体活動の低下、体重減少、疲労感

●抑うつ:Geriatric Depression Scale 15 items version (GDS-15)  

【結果】

研究参加者数:4,126人

平均年齢:71.7±5.3歳

性別:男性49.2%、女性50.8%

フレイル発生率

・身体的フレイル:6.9%に発症

・抑うつ:20.3%

心理的フレイルの発生率

心理的フレイルを「身体的フレイルに該当し、かつ気分の落ち込みが認められた人」と定義

発生率:3.5%

性差によるフレイルの発生率

・身体的フレイル:男性より女性で多い(P<0.05)

・心理的フレイル:性差による有意差なし

年齢別

・身体的フレイル

・抑うつ

・心理的フレイル

いずれも加齢とともに頻度は増加する傾向であった

要介護度の発生率

追跡期間中に385人(9.3%)が要介護認定を受けている。

フレイルや抑うつがない人に比べて、

身体的フレイルがある人は、ハザード比:1.69(P=0.006)

抑うつがある人は、ハザード比:1.05(P=0.734)

心理的フレイルがある人は、ハザード比:2.24(P<0.001)

【考察】

これにより、身体的フレイルと心理的フレイルはともに要介護の有意なリスク因子であることが示された。一方、気分の落ち込みだけの場合は要介護の有意なリスクでなかった。

【私見】

本研究では「身体的フレイルがある人かつ抑うつ症状がある場合を心理的フレイル」としている。抑うつ症状だけでは、要介護となるリスクではない。個人的に「心理的フレイル」を抑うつ・認知機能低下・意欲低下と単独で考えたいた部分があるので、研究での心理的フレイルの定義に違和感は感じる。

ただ、「身体的フレイルに抑うつが加わった状態=心理的フレイル」では、さらなる予備力低下に与えることは言えるだろうし、要因が複合的に影響しあう部分は必ずもあると思う。

実際のところ、自分たちの関わる患者さんを想像してみても「ADLが低下している、機能障害がある患者で、抑うつや気分障害、意欲の低下などが生じていると、病院内でも患者の日常生活自立度を上げるのに難渋する(原疾患などの影響もかなりあると思う)。そう考えると、「身体的フレイル」に「抑うつ症状」を持つ「心理的フレイル」と判断された方々で、要介護と診断された方が多いのも納得できるだろう。

フレイルの概念は身体的フレイル以外に、今回ご紹介した「心理的フレイル」、そして、独居・外出頻度や知人との交流頻度の低下などで地域から孤立した状態を示す「社会的フレイル」を含んで、「包括的フレイル」として考えることの必要性が言われている。

今回、身体的フレイルに加えて抑うつがある場合、要介護度となるリスクは高まることが明らかになっている。やはり、地域で過ごされている人、病院に入院される患者について、フレイルにおいても複数の視野でみていく必要があるだろう。

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