<KCCC文献紹介 第136弾:その情報、本当に重要ですか?>

Hoffmann M, Holl AK, Burgsteiner H, et al.(2018)Prioritizing information topics for relatives of critically ill patients : Cross-sectional survey among intensive care unit relatives and professionals. Wien Klin Wochenschr 130(21-22); 645-652

論文:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6244832/pdf/508_2018_Article_1377.pdf

【要約】

 集中治療室(ICU)への入室は、患者のみならず家族やその他の関係者に大きな影響を与える。そのようなストレスの多い状況に対応してもらうために、適切かつアクセス可能な情報を利用できることが重要となる。家族と医療専門職者の間にある情報の非対称性は、家族の満足度やその後の不安、抑うつ、ストレス症状などに悪影響を与える可能性がある。そのため、この研究は、ICU患者の家族にとって最も重要なトピックがどのようなものなのかを理解し、家族の情報ニーズについて医療専門職者がどのように認識しているのかを明らかにすることを目的とした。2015年に横断調査を実施した。この調査では、4つの異なるグループ(家族、ICU医師、ICU看護師、SNSグループに参加しているICU専門家)を対象に「診断」、「治療」、「快適さ」、「家族」、「終末期」などに関する42の質問を用いたアンケートを行った。このアンケートには合計336人の回答があった(家族26名、ICU医師28名、ICU看護師202名、SNSグループに参加しているICU専門家80名)。家族にとって重要な情報となる上位5トピックは、

①患者にいま何が起きているのか(recent events:crisis):体温や血圧などの身体的指標の急激な悪化など、②自分ができることがあるか(my participation):自分が治療やケアにおいてできることがないか、③病院での汚染(contamination in hospital):手指衛生や隔離についてなどの情報、④患者の身体的な痛み:患者に痛みがあるのか、痛みを予防/治療するために何が行われているのか、⑤今後の可能性:ICUからの退室予定など、であった。

 他方、ICU医師が重要な情報として捉えていた上位5トピックは、「どんなとき、どこへ連絡をしたら良いのか」、「神経学的状態(意識レベルなど)」、「自分の声を患者が聞くことができるか」、「治療の無益性(死の可能性など)」、「いつ面会ができるか」であった。ICU看護師が重要な情報として捉えていた上位5トピックは、「いつ面会ができるか」「どんなとき、どこへ連絡をしたら良いのか」「神経学的状態」「自分の声を患者が聞くことができるか」「患者に触れることができるか」「患者の身体的な痛み」であった。SNSグループに参加しているICU専門家が重要な情報として捉えていた上位5トピックは、「患者に触れることができるか」、「自分の声を患者が聞くことができるか」、「神経学的状態」、「治療の無益性」「いつ面会ができるか」であった。

ICUの専門家たちが家族にとって重要だと捉えている情報のトピックと、実際に家族が重要だと捉えている情報のトピックには、違いがあるのかもしれない。

【私見】

 ICUに限ったことではありませんが、患者の家族のニーズとして「情報のニーズ」が高いということは、一般的に知られています。だからこそ、医療者は家族への説明を大切にしていると思います。一方で、家族と接触できる時間は限られており、じっくりと話をすることが難しいのも現状ではないでしょうか。だからこそ、重要だと思われる情報から優先的に提供するのは当然のことです。しかし、医療者が重要だと思っている情報と家族が欲している情報が異なっていると、せっかくの説明も、家族の安心につながらないかもしれません。

 今回ご紹介した研究は、研究デザイン的に改善の余地が多くある(ので、ここで明らかになった結果をそのまま鵜呑みにすることは避けるべきです(エビデンスレベルとしては低い)。ただ、家族への説明を行う上で、医療者が大事と考えていることと、家族が大事と考えていることには「大きな違い」があるのかもしれないという、内省の機会を与えてくれます。

 この「大きな違い」にはさまざまな要因が影響しているとは思います。そのなかで忘れてならないことのひとつに、「情報の非対称性」があるのではないでしょうか。つまり、医療者の当たり前は、家族の当たり前ではないということです。例えば、血圧の変化は医療者にとっては日常的なできごとであるため、気にもならないかもしれません。しかし、家族にとっては、小さな変化も「非日常」であるわけです。また、専門的な知識がない場合、何が確かで何が不確かなのかも判断がつかないこともあるでしょう。危機的な状態にあるときには、尚更このような判断がつきにくくなります。少し話が飛躍しますが、昨今錯綜している新型コロナウィルスに纏わる不確かな情報も、非医療者の混乱を招いています。(こちらは、比較的優良な情報→ https://newspicks.com/news/4681900?invoker=np_urlshare_uid2537373&utm_medium=urlshare&utm_source=newspicks&utm_campaign=np_urlshare&fbclid=IwAR0oFv3IZXTecdAUxLGLS1vUNfd_nlDalNIaOH4RObebTNMtmjDqJbAG0QU )

 目の前の人が危機に瀕しているとき、求められる情報は何なのか?それをどのように伝えていくことが大切なのか?医療の専門職者として常に意識しておきたいですね。

画像引用元:

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Flifehopeandtruth.com%2Fbible%2Fis-the-bible-true%2Fwhat-is-truth%2F&psig=AOvVaw0R7VQ7YtIpibgUI2VdgL7a&ust=1583649310302000&source=images&cd=vfe&ved=0CA0QjhxqFwoTCOjDs8vfh-gCFQAAAAAdAAAAABAU



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