<KCCC文献紹介 第140弾:近い未来にも求められ続けること(敗血症とAIの研究から考える)>

 ここ最近、「AIに仕事が奪われる」なんて話を見聞きすることがありますが、これも都市伝説的な話だというのが定説になりつつあります。とはいえ、膨大な情報を分析する能力は、人間の脳では計算機(パソコン)に敵わないことは間違いなさそうです…。

 医療の世界でもAIの活躍はめざましく、画像診断の精度などでは病理医のそれを凌ぐレベルになっているという報告もされています。

 救急領域などの緊急な状況下では、限られた時間の中でさまざまな情報から的確なアセスメントをすることが求められます。こういった状況では、リスク予測のためにスクリーニングを実施することが有効的になります。敗血症のスクリーニングとしてqSOFA、重症患者のトリアージとしてJTAS/CTASなどは有名ですね。今回ご紹介する文献は、このスクリーニングの精度を高める手段として、AI技術の一つである機械学習を用いた研究です。

【紹介文献】

Joonghee K, et al.(2020)Machine learning for prediction of septic shock at initial triage in emergency department. J Crit Care 55; 163-170.

「救急部門における敗血症性ショックの予測としての機械学習」

https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S0883944119301534?token=70C7A7CF059C52EF205CB38654CC74252F8A7DC15BD3617AB4D857528D38D008EB8B0E3296199F312B4D2308D9B117C2

【アブストラクト】 

■背景

救急部門(ED)に搬送された敗血症性ショックをスクリーニングするために、機械学習のアルゴリズムを使用するとqSOFAやMEWSよりも高い精度が得られると仮定した。

■方法

研究対象は、感染の疑いでEDを訪れた20歳以上の成人患者であった。標的イベントは、到着後24時間以内の敗血症性ショックとした。人口統計、バイタルサイン、意識レベル、主訴(CC)、および初期の血液検査結果を予測因子として用いた。CCは、特異値分解を使用して16次元のベクトル空間に埋め込んだ。サポートベクターマシン、勾配ブースティングマシン、ランダムフォレスト、多変量適応回帰スプライン、最小絶対収縮および選択演算子、リッジ回帰、およびそれらのアンサンブルを含む6つの基本学習器をテストした。また、さまざまな設定でMLPネットワークのトレーニングとテストを実施した。

■結果

合計で49,560人の患者が含まれ、4817人(9.7%)が24時間以内に敗血症性ショックを受けた。機械学習で生成された分類子(予測因子)は、qSOFAスコア・MEWS・年齢調整済qSOFA・年齢調整済MEWSと比べ、大幅に優れていた(AUROC:0.883-0.929 )。基本分類子のアンサンブルは最高のパフォーマンスを示し、CC埋め込みの追加はパフォーマンスの統計的に有意な増加と関連していた。

■結論

機械学習で生成した分類子(予測因子)は、救急部門での敗血症性ショックのスクリーニングにおいて、臨床スコアを大幅に上回っている。

【私見】

 この研究は、読み解く上で機械学習に関する知識が求められるため、いつもご紹介している文献よりもさらに難解な文献ではあります。私自身も、よくよく読めているのかが微妙で恐縮なのですが、今回の研究では、複数ある機械学習の手法(7種類)を試されたようです。そして、従来のスクリーニング法(qSOFAやMEWS)よりも敗血症性ショックを判別する能力が高かったという結果でした。

 それらの機械学習が生成した予測因子のTOP5は、①収縮期血圧(sBP)、②AVPU(意識の変容)、③SpO2、④拡張期血圧(dBP)、⑤体温、でした。このなかでも、収縮期血圧とAVPU(意識の変容)は、特に重要な予測因子であったこようです。このふたつはqSOFAでも採用されている項目ですし、改めて重要な項目であると解釈して良さそうですね。血液検査としては、好中球、単球、白血球数、リンパ球、クレアチニンの順で重要な項目であったようです。

 AI技術、特に機械学習などは、医療の現場でもすでに普及しつつあります。この技術には、膨大なデータを管理できる専門の技術者の協力が不可欠です。そして、何よりも正確なデータが集まらなければ、適切な予測はできません。IoT(Internet of Things)技術も進み、モニター機器の性能も高まってはきていますが、依然として我々看護師のモニタリング技術に依存しているところは否めません。つまり、「正確かつたくさんのデータ」を効率よく集めることが求められます。そこには、①フィジカルイグザムの技術力を高めておくこと、②データを適切に記録することが重要となるでしょう。そして、これらか機械学習が当たり前となってくる未来を考えると、これらのデータをどう扱うのか非医療者であるデータ技術者との連携も重要になってきます。京都大学ICUで取り組まれているデータベースの構築なども、今後ますます重要な取り組みとなってくるでしょうね。

 一方で、カルテを見返してみたとき、呼吸数がモニタリングされていないなど、適切なモニタリングができていない現状も、残念ながら散見されます。我々が、日常的に行っているケアをより丁寧に実施していくことは、医療の未来にも重要になってきそうですね。



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