【KCCC文献紹介 第144弾:シリーズ低血糖part2-日本の重症低血糖患者の現状】

 シリーズ低血糖の第2弾です。重症低血糖は、救急、クリティカル部門でも非常に関係のある病態の一つではないでしょうか。低血糖の基本的なことは以前のコラムで触れましたが、今回は日本の重症低血糖患者の現状について論文を元に解説していきたいと思います。

文献
難波 光義, 岩倉 敏夫, 西村 理明他,糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告,糖尿病 60(12) : 826-842, 2017.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/60/12/60_826/_article/-char/ja

 重症低血糖なんて昔からたくさん見てきたから知っているよ、と思う方もいらっしゃると思いますが、実は今まで正確に調査されてきていなかったようです。日本糖尿病学会では、2017年に「糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告」が出されています。その内容をざっとお伝えできたらと思います。なお、この論文では重症低血糖を、「自己のみでは対処できない低血糖症状であり、発症・発見・受診時の静脈血漿血糖値が60mg/dl未満(毛細管全血50mg/dl未満)」であると定義されています。

【対象】
全国631認定教育施設に調査協力を依頼し、193施設より施設データを、うち113施設よりは文書同意を得た798例の症例データ。期間は2014年4月1日から2015年3月31日の1年間。

【結果】
• 193施設中、149施設(77.2%)に救急部が併設。
• 1施設あたりの救急部への年間救急搬送件数(中央値)4962件のうち、重症低血糖は17.0件(0.34 %)をしめた。
• 病型は1型240人,2型480人,その他78人
• 年齢は1型54.0(41.0-67.0)歳,2型77.0(68.0-83.0)歳であり、2型が有意に高齢(P<0.001)
• eGFRは1型73.3(53.5-91.1)mL/min/1.73m2,2型50.6(31.8-71.1)mL/min/1.73m2となり,2型が有意に低値(P<0.001)。
• 重症低血糖発生時点のHbA1cは全体で7.0(6.3-8.1)%,1型7.5(6.9-8.6)%,2型6.8(6.1-7.6)%であり2型で低値(P<0.001)。
• 重症低血糖の前駆症状の有無に関しては全体で有35.5 %,無35.6 %,不明28.9 %,前駆症状の発現率は1型で41.0 %,2型で56.9 %となり,1型の方が前駆症状の発現率は低かった(P<0.001).
• 2型の治療薬はインスリン使用群(SU薬併用29人含む)292人(60.8 %),SU薬群(インスリン未使用)159人(33.1 %),インスリン・SU薬未使用群29人(6.0 %)であった.調査対象798例のうち296例(37.2 %)は,過去にも重症低血糖で救急受診した既往を有していた.

【考察】
今後は重症低血糖の高リスク者や既往者に対し,低血糖の教育と治療の適正化による発症予防対策が急務であることが明確となった.

【私見】

 いかがでしたでしょうか。重症低血糖患者は全体の数からいったらそれほど多くはないかもしれないですね。しかし、死や後遺症につながる重大な病態なので、正しく対処できると良いですね。
 救急で勤務する看護師としては、SU薬(アマリール®︎、グリメピリド®︎など)内服による低血糖をほっとかないことが重要だと私は思います。低血糖はインスリン注射で起きると思われている方がほとんどではないかと思いますが、実はインスリン注射をしておらず、SU薬内服で起きている重症低血糖は33.1%もいます。これが非常に厄介なのです…。なぜ厄介なのかというと、インスリンの効果時間はたかがしれています。食直前に打つ超速効型インスリン(ヒューマログ®︎、アピドラ®︎、ノボラピッド®︎など)の効果は3〜5時間程度なので、このインスリンが原因の場合は3〜5時間で概ね方が付きます。それに比べ、SU薬による低血糖は概ね1日程度持続し、腎機能が悪い高齢者はもっと低血糖が遷延します。なので、SU薬が原因の重症低血糖は原則入院です。帰宅すると再度低血糖を起こし救急搬送されてくる確率が上がります。救急対応だけでなく、患者のこの後の経過を予想し、医師とディスカッションすることが重要かもしれないですね。

 今回は日本の重症低血糖患者の現状をお伝えしましたが、次回からはもっと再発予防の視点など、看護ケアに関することをお伝えできたらと思います。

****************************************
KCCCのLINEが新しくなりました。
これまで登録いただいていた方も下記のボタンからご登録をお願いいたします!
文献紹介やコラムの更新情報、セミナー開催案等を通知させてもらっております。

下記のQRコードからでも登録できます。

Follow me!