【KCCC文献紹介 第146弾:感染症発生時およびアウトブレイク時の看護師と感染管理者の仕事量について】

Hessels AJ, Kelly AM, Chen L, et al. Impact of infectious exposures and outbreaks on nurse and infection preventionist workload.Am J Infect Control. 2019 Jun;47(6):623-627.

【背景】
看護師および感染管理者の仕事量は、感染症発生時およびアウトブレイクへの対応に応じて増加する。
特定の感染症への対応に伴う時間的負担を理解することで、リソースの配分が改善すると考えられる。
本研究の目的は、看護師および感染管理者により報告された、一般的な感染症発生時およびアウトブレイクへの対応の仕事量を評価することである。

【方法】
ニューヨークの病院に勤務する看護師、および米国感染制御専門家協会の2018年年総会に出席した感染管理者、または米国感染制御専門家協会の地域支部に所属する感染管理者に対し、質問紙を配布した。
回答者には、感染症発生およびアウトブレイクのシナリオに応じた自身の日常業務の増加を評価し、最も時間を要する業務をランク付けするように依頼した。

【結果】
看護師150名、感染管理者 228名から回答を得た。看護師は、クロストリジウムディフィシル(76%)、シラミまたは疥癬(46%)、およびインフルエンザ(45%)について仕事量が60分以上増加すると回答した。
感染管理者は、ムンプスまたは麻疹(66%)、結核(64%)、およびクロストリジウムディフィシル(50%)について、仕事量が60分以上増加すると報告した。
看護師は時間がかかる業務として、感染経路別予防策の施行、患者と家族への感染予防策の指導、および人員配置の変更を、最も時間を要する業務と報告した。
感染管理者は、カルテ確認、感染者リストの編集、およびアウトブレイク予防措置の施行を最も時間を要する業務と報告した。

【結論】
疥癬やシラミなど、治療が比較的簡単で伝播しにくい感染症でさえ、看護師の仕事量に顕著に影響する可能性がある。
注目すべきことは、看護師の75% と感染管理者の半数は、クロストリジウムディフィシルによって日常の仕事量が1時間以上増えると報告していた。

【私見】
本研究は質問紙調査ですが、感染対策は病院や国ごとに大きな相違があるものではありませんし、本邦の事情にも即した内容だと思います。
ただし、本報告は、「60分以上」を基準としていますが、水痘や麻疹がアウトブレイクした場合、感染管理者の対応は実際には何時間もかかっていると思います。

現在日本で猛威を奮っているCOVID-19では、そもそも現場のPPEが不足していることも相まって、これらの感染症発生時とは比にならないほど、対応時の業務量は劇的に増加しています。現場の最前線でCOVID-19と対峙している医療者は、言葉にならないほどの苦痛と苦悩を抱えています。
本報告でもわかるように、ベッドサイドの看護師は感染症を発症している患者に直接関わるため、自らが・自らの家族が感染しないために、他患者・スタッフに感染させないために感染経路別予防策を徹底する必要があり、患者家族への指導を行う必要もあります。また、ニュースにもあるように、COVID-19患者への濃厚接触者は自宅待機という措置を取らないといけないこともあるため、人員配置の変更も現場レベルで検討し、実施しなければなりません。
そして、感染管理者は、現場の医師・看護師と連携して指揮・リーダーシップを取る必要があるため、情報収集やアウトブレイク予防にむけた医療者への指導、環境の構築を行う必要があります。

現在、日本でも、未曾有の事態により医療崩壊は着実に迫っていると考えています。実際、COVID-19対応に追われるだけでなく、PPEが不足することで医療者の安全が守られない、予定手術を中止せざるを得ない、病棟閉鎖をしなければいけないなど、平時の医療を提供できていない施設があるということを、事実として受け止めなければいけません。現場で実際に起きていることを、少しでも多くの方々に知っていただき、個々人が責任ある行動を取ることができれば、世界を救うことはできると信じています。

※補足説明:クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は偽膜性腸炎の起因菌であり、抗菌薬関連下痢症の原因のうち約10~20%を占めています。健康保菌者でも保有する場合があるため、C.difficile が便より検出されただけでは意味を持たないこともありますが、しばしば院内感染を引き起こすため、排菌者には接触感染対策が必要とされています。

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