【KCCC文献紹介 第147弾:救急外来受診患者のアセスメントは、身体の緊急度判断だけで良いのか】

紹介文献

寺本千恵, 永田智子, 成瀬昂, 横田慎一郎, & 山本則子. (2018). 救急外来を受診後に帰宅した患者の 30 日以内の再受診パターン. 日本看護科学会誌, 38, 336-345.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/38/0/38_38336/_pdf/-char/ja

■背景

OECD諸国では救急外来への受診患者が増加しており、そのうち7~8割を帰宅することが可能な患者が占めていると言われている。また、救急外来の診断・治療の進歩により、今後は継続的な医療を要する状態で救急から患者を帰宅させる場合も増加すると推測されている。一方で、このような患者は帰宅後のADL低下、要介護状態、30日以内の死亡、予定外入院、救急外来再受診のリスクが高く、帰宅後の再受診などのリスクを軽減するための支援方法を検討する必要がある。

■目的

救急外来受診後30日以内の再受診例に関し、再受診の原因や経緯からパターンを見いだすこと

■リサーチクエスチョン

①救急帰宅患者が帰宅後30日以内に再受診した場合、再受診までの経緯にはどのようなパターンがあるのか

②再受診パターンごとの患者の特徴はどのようなものか

方法

<研究デザイン>

・比較事例研究

※ 各事例の経過に見られる一定のパターンに着目して何時冷夏を積み重ねていく中でいくつかのパターン分類を見いだす質的研究の一つ

<対象者>

東京都にあるA大学附属病院の救命救急センターに2013年2月1日から12月31日に救急外来を受診した患者のうち、受診後に帰宅し30日以内に再受診をした患者を対象とした。

対象期間中に条件に当てはまった患者682名のうち統計ソフト上でランダムに136名を抽出し分析対象とした。

<データ収集方法>

電子カルテに医師が記載した救急受診時の情報をデータとして用いた。

結果

分析対象とした136事例は、初回受診時に医師から再受診を促された【予定再受診】、帰宅後に再受診を促された【医療職者の指示による再受診】、同じ症状が悪化した【医療が必要になった再受診】、異なる症状が出現した【異なるエピソードでの再受診】、再受診の必要性が行く意図思われる【軽症での再受診】の5つのパターンに分類された。【医療が必要になった再受診】の患者には初回受診時に症状の見通しを説明し、その後の受診などの対処行動がとれるようなかかわりを行う必要があり、【異なるエピソードでの再受診】および【軽症での再受診】の患者には地域の初期救急医療機関や電話相談などの情報提供を行う必要があると考えられる。

私見】

①救急外来受診患者のアセスメントは、身体の緊急度判断だけで良いのか

 本研究で明らかにされた救急外来受診後30日以内の再受診パターンのうち、【異なるエピソードでの再受診】および【軽症での再受診】の患者は急性的な対応が必ずしも必要ではありませんでした。そういえば、私が救急外来を担当した日、荒れ狂う救外で何度も「お待ちくださいね」と声をかけた患者さんたちはどうしているだろう…とふと思いだしました。きっとこれを読んでくださっている読者の皆さんの中にも、忙しい中特に緊急性の高くなさそうな患者さんの対応に困ったことがある方もおられるのではないでしょうか。このような患者さんたちは、何を目的にあるいは何を抱えて救急外来を受診したのでしょうか、少し考えてみてください。本当は一人暮らしで知り合いが周りにおらず気軽に話せる相手がいなかったり、孤独感を感じており、それが慢性的に身体や心理的健康に変化をもたらし、救急外来受診に至ったのではないでしょうか。

 近年、人々の身体的・心理的健康にはその人の世帯属性や経済状況、他者とのつながりなど社会背景が関連していることが、さまざまな研究によって明らかとなっています。また、単に健康状態に影響するだけでなく、疾病の治療アドヒアランスや保健サービス・医療機関へのアクセスにも関連しており、健康格差の原因と考えられています。ある意味、患者さんの救急外来の受診は、医療従事者がタッチすることができる数少ない機会の一つと言えます。家族の有無や生保なのかなど少なからず確認する社会背景もあると思いますが、もう一歩踏み込んだ患者への聞き取りとアセスメントが必要だと個人的には考えています。もちろん看護師だけ医師だけではどうしようもないこともあるので、その時は病院のソーシャルワーカーなどに協力してもらうこともこれから必要になると考えます。イギリスの取り組みを参考に日本でも具体的な取り組みが行われ始めています。それはまた、今後紹介させていただきます。

 長くなってしまいましたが、今回伝えたかったことは救急外来を担当する看護師の皆さんに、身体的・心理的状態だけでなく、その人が救急外来にたどり着いた社会背景についても少し考えていただきたいということです。慌ただしい救外を想像するとちょっと理想的と思えるようなことですが、一瞬立ち止まって考えてもらえると嬉しいです。

②研究手法に関する一言

 本研究が質的研究であることを踏まえたうえであえて一点述べると、分析対象者の人数を増やす(あるいは条件に合った患者全員を対象にする)とパターンごとの患者の特徴が量的にも明らかにできたのではないかと考えます。特に、①で説明した社会的要因は本研究ではその有意さは示されませんでしたが、実際は非常に関連していることが考えられます。量的に特徴を示す研究も今後確認してみるとおもしろそうです。

 本研究は日本語の論文であり非常に読みやすい内容であることから、研究に対して苦手意識のある方でも気軽に読める内容だと思います。ぜひ、本文を読んでみてください。

参考文献

小林哲也. (2015). Andersen のサービス利用の行動モデルにおける Context の概念. 人間関係学研究: 社会学社会心理学人間福祉学: 大妻女子大学人間関係学部紀要, 17, 55-63.

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