【KCCC文献紹介 第154弾:指先の皮膚血流変化はショック患者の死亡率と関連している?】

【はじめに】

みなさんはこんな経験はないだろうか?!

敗血症性ショックや心原性ショックなどのショック患者がICUに入室し、様々な介入を行い、その結果、血圧は上昇し循環動態は落ち着き、MAPも65mmHg以上維持できるようになってきた。

だけど、末梢が冷たかったり、チアノーゼが出ていて、末梢循環を評価すると循環障害が改善していないと感じることがある。どうも末梢循環はまだ安定していない気がしてならないといった状況である。

実際のところ、他の研究では膝から広がっていくチアノーゼを評価するMottlingスコアの値が高い(高いほど低灌流が示唆される)ことが死亡率と関連していることが明らかとなっている。

ということは、血圧が安定しても末梢の灌流障害が残っている場合、患者の予後は悪いままということになる。

今回はそんな末梢循環と死亡率との関連を「指先の血流量を測定できるデバイス」を用いて評価した研究をご紹介する。

【参考文献】

Alterations in Skin Blood Flow at the Fingertip Are Related to Mortality in Patients With Circulatory Shock.
Critical Care Medicine, 48(4), 443–450. 2020.
Mongkolpun, W., Orbegozo, D., Cordeiro, C. P. R., Franco, C. J. C. S., Vincent, J.-L., & Creteur, J. 

【URL】

http://doi.org/10.1097/CCM.0000000000004177

【方法】

研究デザイン:前向き介入研究

研究場所:大学病院の35床のICU(medical-surgical care unit)

研究対象者(P):

①70名の患者

・ショック(12時間以内)

・平均血圧65mmHg以上を維持するために血管作動薬の使用が必要

・組織還流障害の徴候がみられる

②12名の健常者

介入(I):

・皮膚レーザードプラーを用いて、指先の皮膚血流量(skin blood flow:SBF)を測定

 皮膚血流量の測定は以下の3点を行っている

 ①装着時の体温で測定(基準値)(SBF:bt)

 ②指先を37℃に3分間温めた後に測定(SBF:37)

 ③①と②に測定した時の血流量の変化(⊿SBF/⊿T)

※③の変化量の求め方

(SBF:bt ー SBF:37)÷(37℃に保温した時の指先温② ー 装着時の指先温①)で求められるので、⊿SBF/⊿Tの値が大きいほど、温めた時に血流が増加したことになる。

・もう一方の手で毛細血管補充時間(Capillary refill time)と末梢灌流指数(peripheral perfusion index)を測定

測定のタイミング:介入時・介入6時間後・24時間後・48時間後・72時間後・96時間後

※レーザードプラー:レーザ照射を行うことによって、無侵襲で皮膚表面の血流量・血液分布などを評価できる機器

【結果】

患者特性:

年齢:平均63歳

APACHEⅡスコア:26(21-31)

ショック:敗血症性(47名)、心原性(22名)、出血性(1名)

死亡率:70名中、生存者(41名:58.57%)、非生存者(29名:41.25%)

【測定値①:健常人と患者の比較】

-データは、中央値(25パーセンタイル-75パーセンタイル)-

指先温度: 健常者   30.1℃(29.8-30.2)

患者 26.9℃(25.3-229.3)p=0.01

SBF:bt 健常者 201(158-245)

患者 18(12-73)p<0.01

SBF:37 健常者 201(158-245)

患者  61(26-73)p<0.01 

⊿SBF/⊿T 健常者 59.5(40.4-62.5)

患者  1.9(0.9-6.3)p<0.01

結果の解釈①:結果①から健常人に比べるとショック患者は指先の温度が低い。

また、基準値・37度に温めた時の両者で血流量が低い結果であった。

さらに、基準値から37℃に温めた時の変化も健常人の方が大きいことが分かる。

【測定値②:生存者と非生存者での比較】

-データは、中央値(25パーセンタイル-75パーセンタイル)-

CRT: 生存者 2秒(1-3)

非生存者 3秒(3-4)p<0.05

指先温度: 生存者 28℃(26-30)

非生存者 26℃(24-28)p=0.02

末梢灌流指標:生存者 1.4(0.5-1.3)

非生存者 1.2(0.6-1.8)p=0.6

SBF 生存者 31(17-113)

非生存者 16(9-32)p=0.01 

⊿SBF/⊿T 生存者 4.3(1.7-10.9)

非生存者 0.9(0.4-2.9)p=0.01

結果の解釈②:生存者と非生存者で比較した場合、生存者と非生存者を比較した場合、生存者と非生存者で比較した場合、生存者と非生存者を比較した場合、非生存者の方がCRTが延長している(CRTが延長する程、末梢循環障害がある)。さらに、指先の温度が低く、末梢循環障害があることが分かる。そして、⊿SBF/⊿Tの差があまりなく、37℃に温めても血流量の増加が乏しい結果であった。

【AUROC曲線】

・ScvO2 AUC 0.58 [0.44-0.72]

・Lac AUC 0.73 [0.61-0.86]

・CRT AUC 0.72 [0.60-0.85]

・SBF AUC 0.83 [0.73-0.93]

・⊿SBF/⊿T AUC 0.94 [0.88-0.99]

(⊿SBF/⊿Tのカットオフ値を1.25以下にした場合の値、

 その時の感度88%・特異度89%となっている。)

【考察】

心原性ショック患者の指先の皮膚血流量の変化は、予後に直接関係している。

【私見】

今回、レーザードップラーという特殊な器具を用いて指先の血流量や血流量の変化を評価した。その結果、⊿SBF/⊿T(変化量)が患者の死亡率の予測に関連していることが明らかになっている。ただ、正直なところ、レーザードップラーはまだ臨床で日常的に使用されている機器ではない。そのため、私達がこれらを指標に循環障害を評価していくのはもう少し先になりそうである。

この結果をみていて個人的に気になったのは、ScvO2よりもLacやCRTといった指標の方が死亡率の高さに関連している点になる。血圧・脈拍など様々なバイタルサインや検査データを評価しているが、CRTやMottlingスコアといった普段から確認できるフィジカルアセスメントが大切な評価指標になるかもしれない。

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レーザードップラーの参考資料:

http://j-ca.org/wp/wp-content/uploads/2016/03/4505_so6.pdf

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