<コラム167:未確認にどう対応するか>

 本日6月24日は「UFOの日」です。UFOとは未確認飛行物体(unidentified flying object)の略で、何であるか確認されていない(正体不明の)飛行する物体のことを指します。その正体は航空機などの人工物や、天体や雲、鳥などといった自然物などを見間違えたという場合もありますが、皆さんが一度は耳にしたこともあるように、地球外生命体などの乗り物といった意味でも使われていると思います。私、個人的にはそのような話が大好きで子どもの頃からテレビ番組で特集があると、釘付けになっていたものです。その中でも有名な「ロズウェル事件」や「エリア51」などといったワードは私の心をくすぐるものです。最近では、仙台市の上空に未確認飛行物体が現れたとメディアに取り上げられ話題になっていましたね。今となってはいい歳になった私ですが、その話題にも釘付けになっていました(笑)

 …と、空想のUFOの話はまたの機会として、今回は「未確認」繋がりで、診断がなされていない原因が未確認の症状や病気に対応する救急看護師の臨床判断について触れてみたいと思います。

 ここで、最近私が経験した事例なのですが準夜帯の23時頃のERでの出来事です。生後6ヵ月の乳児が母親に抱かれながらウォークインで受診しました。母親は受付の際に事務員に「赤ちゃんの様子がおかしいんです。」と伝え、それを聞いた看護師がすぐさま待合室に見に行くと、その乳児は全身硬直性の痙攣をしていました。母親に状況を聞きながら初療室へ誘導し、呼吸・循環の確認を行いながらモニタリングを開始します。母親からは「家で一度こんな状態になって、病院に向かっている車の中からもう10分以上はこんな状態なんです。」との情報がありました。現段階ではABCには問題はなさそうですが、長時間の痙攣発作が持続している状態です。乳児の直接的ケアを他の看護師に託すと、私は小児科医師に「ウォークイン」「乳児」「痙攣発作持続している」「すぐに来てほしい」のワードを手短に伝え、母親に乳児の体重を聞きながら補助換気・気管内挿管、静脈路確保の準備、ミダゾラム、ジアゼパムを出し微量で投与できるように小容量のシリンジを準備しました。また、その際には静脈路が確保できなかった時のために、鼻腔投与なども念頭に置いておきました。その後、ベッドサイド で不安そうに立ち尽くしている母親に声をかけ、椅子に座ってもらいながら「すぐに先生に診てもらうので安心してください。先生が来たら、赤ちゃんのことをお聞きすると思うので、落ち着いてお話しくださいね。」と声をかけました。間もなく小児科医師が到着し、母親から状況を聞きながら薬剤投与のために静脈路確保を試みますが確保困難であったため、ミダゾラムを鼻腔投与行い徐々に鎮痙作用が得られたところで、再度静脈路確保しジアゼパムを使用し完全に鎮痙することができました。最終的には、初発の熱性痙攣の診断で小児科病棟へ入院となりました。

 さて、このようにERにはウォークインで受診する患者の中にも重症例が潜んでいます。このような事例を経験すると、そのことを痛感します。

 病態への対応が優先される救命救急において、救急看護師には知識や技術における準備性・予測性・即応性を臨機応変に使い分ける臨床判断が求められます。しかし、救急看護師の経験は様々であり、看護レベルの異なる看護師が救急医療体制を担っている現状があります。さらに、Bennerは「実践経験が3〜5年の中堅レベルにあっても全く新しい事例に遭遇した時や、分析的かつ手続き的な説明が必要な場合は、スピードと柔軟性に欠ける一人前レベルに後退する」と述べています。ここで、救急初療看護における臨床経験による臨床判断の差異1)について文献で明らかにされていることを紹介させていただきます。

<初療経験1年目の看護師の臨床判断>

①搬入前情報からの限られた予測

②マニュアルにそった搬入準備

③固定化された観察

④断片的なアセスメントによる短絡的な病態の判断

⑤次に行われる処置を予測する判断

⑥何かによりどころをもちながら処置に没頭

⑦行われた処置をそのまま引き継ぐ

⑧振り返って何が起きていたかを意味づける

<初療経験5年目以上の看護師の臨床判断>

①搬入前情報と経験をもとにあらゆる病態を予測した準備

②広い視野での観察と同時に、優先される情報を焦点化させる観察

③病態を同定し優先される処置の判断

④効果的、効率的な手順を追求しながらも迅速な処置への対応

⑤患者の負担を最小限にするケア

⑥今後生じる問題の総括と評価

 以上が結果として導き出され、結論では以下のように述べられています。

① 初療看護経験1年目の看護師は、観察や処置介助に追われ、場面ごとの臨床判断に終始していたが、5年以上は経験を念頭に置き、広い視野から焦点化させながら臨床判断を行なっていた。

② 初療看護経験1年目の看護師と5年以上の看護師の臨床判断の差異は、経験からの予測性における選択肢の多様性や具体性で示された。

③ 初療看護経験1年目の看護師には、臨床現場での支援体制と後からフィードバックすることで状況理解を促す教育が必要である。

 この文献を読みながら、今回私が経験した事例を振り返ってみると、私の救急初療看護における臨床判断もまだまだだなと考えさせられました。加えて、Bennerが述べているように全く新しい事例に遭遇した時には、さらにスピードや柔軟性に欠けるといった点に、私自身も共に働いているスタッフに対しても気をつけなければいけないと考えさせられました。皆さんも、日々の看護を振り返り臨床判断について考えたことはありますか?

参考・引用文献

1)岩本満美,岩本幹子,高岡勇子(2014):救急初療看護における臨床経験による臨床判断の差異,日本救急看護学会誌,16(2)13-22

2)森島千都子,當目雅代(2016):救急認定看護師の救命救急対応における看護実践能力の構造,日本クリティカルケア看護学会誌,12(1),49-59

画像出典:https://pixabay.com/photos/fantasy-landscape-ufo-glacier-2700914/

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