【KCCC文献紹介第160段:フレイルを持つ高齢者の血圧は低めで管理しないほうがいい?!】

集中治療や救急領域でも「フレイル」は話題にのぼることが多いトピックだと思います。
まだまだ、周知されるようになってから新しい概念のように思いますし、知見もこれから色々と報告されてくると思いますが、今回はこのフレイルをもつ高齢者に関連した文献をご紹介します。
高血圧は心血管系イベントとの関連性が報告されていますが、フレイル患者でも同様に「血圧は低め」を目標にしたらいいのでしょうか?!今回は、約41万件という膨大なカルテデータから血圧は高めの方がいいか、低めがいいか検討しています。

=ご紹介する文献=
Blood pressure in frail older adults: associations with cardiovascular outcomes and all-cause mortality.
Masoli, J. A. H., Delgado, J., Pilling, L., Strain, D., & Melzer, D.
Age and Ageing, 135, e146–7.2020

URL:http://doi.org/10.1093/ageing/afaa028

【目的】
75 歳以上の高齢者を対象に、血圧とと死亡率・心血管アウトカムとの関連性を確認すること

【方法】
・電子カルテ(臨床実践研究データリンク、n = 415,980)を用いた前向き観察研究
・観察期間:2000から2014年の10年間
・分析方法:Coxハザードモデルを用いて、
 フレイル程度(eFI:非フレイル、軽度、中等度、重度のフレイル)で層
 別化し、併存疾患、心血管リスクおよびBPの軌跡に関する感度分析を行
 い、心血管イベントおよび死亡率と血圧との関連性を検証した。

【結果】
●心血管アウトカムのリスク
 フレイルか非フレイルを問わず、SBPが150mmHgを超えると増加すること
 が明らかになった。

一方で、
●死亡率との関連は、
 非フレイルで85歳以上の場合、フレイルを持つ75~84歳、フレイルを持つ85
 歳以上で異なっていた。

つまり、フレイルを持つ高齢者は血圧が130-139mmHg以上の方がより
    低い死亡リスクと関連していた。

=150~159mmHgの患者と130~139mmHgを比較した場合=
・非フレイル HR=0.94、0.92~0.97
・中等度~重度のフレイル HR=0.84、0.77~0.92
 ※血圧が高いほうが、死亡率が低い結果になっている・
 中等度〜重度のフレイル高齢者は、BP=150~159mmHgで管理した患者の方
 が、130~139mmHgで管理した患者よりも死亡率が0.84と低い。

=SBP<130mmHgおよび拡張期(D)BP<80mmHg=
 75歳以上の患者で死亡率と関連していた。

【考察】
「フレイルを持つ高齢者ではSBPは150~159 mmHgくらいの方がよい」という意外な結果である。
大規模ではあるが、カルテ分析による後向観察研究であり、今後、再度検証すべき仮説を作成するに必要な文献になる。

【私見】
本研究でも、同様に心血管系の発生リスクを増加させる要因として血圧が高いことが明らかになっています。この結果だけをみると、きちんと降圧するほうが良いという意見になりそうですが、その一方で、フレイルを持つ高齢者の死亡率は血圧を150~159mmHgに管理した方が低くなるという結果となっていました。
この文献で、こちらの方がいいっ!!を決めることはできません。
ただ、以前から「血圧と心血管系イベント」に関して、「高齢者の降圧療法の必要性」について議論がされてきています。そして、降圧療法が良いとされてきた歴史に対して、待ったをかけるような結果となっています。今後も、こういった研究が進められる中で検討がされていく内容になると思います。
「フレイル」と聞くと、いわゆる「筋力」や「認知機能」といった部分がメインになりがりですが、やはり循環器系との関連についても意識しておく必要がありそうですね!

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