敗血症ガイドラインでは、敗血症と診断後1時間以内の抗菌薬投与が推奨されています。

皆さんの施設・部署ではどうですか?! 

医師主導で1時間以内の抗菌薬投与を推奨している部署もあるかもしれませんし、

もう少し慎重に対処を行っているという部署もあるかもしれません。

個人的に気になるのは、「時間的要素」もそうなんですが、

「実現可能性」があるものなのか?という点が気になり、

色々と調べてみたのでみていきましょう!

パッと思いつくだけでも以下のようなことがきになります。

①「1時間以内の抗菌薬は敗血症による死亡率を改善するのか?」

②「1時間以内の抗菌薬投与にリスクはないのか?」

③「実際に、1時間以内の抗菌薬投与は可能なのか?」

実際、どうなのか簡単にみていきましょう!

①「1時間以内の抗菌薬は敗血症による死亡率を改善するのか?」

まずは、「時間的要素」になります。

ちょうど、2020年に敗血症と早期抗菌薬投与に関するシステマティック・レビューが発表されたので、それをみていきます!

【ご紹介する文献】

Outcome of Immediate Versus Early Antibiotics in Severe Sepsis and Septic Shock: A Systematic Review and Meta-analysis

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0196064420303371

【研究方法】

・検索したデータベース:PubMed、EMBASE、Web of Science、コクラン・ライブラリー

・検索した論文:重症敗血症または敗血症性ショックの成人患者を対象に、抗菌薬投与が実施されたRCT

・敗血症に対する抗菌薬の即時投与(発症後0~1時間)と早期投与(発症後1~3時間)の効果を比較検討している。

【結果】

・検索の結果:13本が含まれた(5本は前向き縦断研究)

・含まれた対象者数:33,863名

・対象者全体で分析を行った場合

 即時投与を行った患者と早期投与を行った患者で比較した場合、死亡率に差がないことが明らかになった。

オッズ比1.09;95%信頼区間0.98~1.21)

・その中でも重症敗血症研究(8,595人)だけに絞って分析を行った結果、

 即時投与を行った患者の方が、早期投与を行った群よりも死亡率が高いことが明らかになった。

オッズ比1.29、95%信頼区間1.09~1.53)

【結論】

 早期からの抗菌薬投与の重要性については広く合意されているものの、1時間というフレームについては根拠となるエビデンスが乏しいことが指摘されており、このメタ解析でも3時間以内と比較して有意な差は示されなかった。

【私見】

これまでに実施された研究をまとめて分析にかけた結果は、「1時間以内」の抗菌薬投与を推奨しているわけではなさそうです。もしかすると、「早期投与」をする方が死亡率が上昇していることから、リスクがある可能性も読み取れます。

ただ、この研究の中にはエビデンスの低い研究も含まれていると論文著者は説明しています。その結果、研究結果には様々なバイアスが含まれていることを懸念していました。

なので、「1時間以内の抗菌薬投与のエビデンスは乏しい」というとことで留めておいて、今後の研究動向をみていく必要がありそうです。

②「1時間以内の抗菌薬投与にリスクはないのか?」

次に、何でも早く早く実施することにリスクはないのだろうか?!と不安もあります。

この不安やリスクは「適切な抗菌薬を投与できない」ことに起因しそうです。

私は医師ではないので、私見でしかないのですが「時間」に固執することで「適切ではない」抗菌薬を投与するリスクはあるように思いますし、それによる有害事象リスクも増えると思います。

③「実際に、1時間以内の抗菌薬投与は可能なのか?」

では、最後に実際に1時間以内の抗菌薬投与は可能なのでしょうか!?

とある施設で、敗血症のトリアージを行ったあと1時間以内に抗菌薬の投与が実現可能性がかるものか検証しました。

【ご紹介する文献】

Antibiotic Delays and Feasibility of a 1-Hour-From-Triage Antibiotic Requirement: Analysis of an Emergency Department Sepsis Quality Improvement Database

URL: DOI: 10.1016/j.annemergmed.2019.07.017

【研究方法】

敗血症診療に対する改善介入の実施前後で、敗血症・敗血症性ショック患者に対する抗菌薬投与の実施状況や抗菌薬投与の遅れの原因になった要因を分析しています。

【結果】

●対象患者 介入前:297名、介入後:357名

●循環障害の発症から3時間以上抗菌薬投与が遅延した割合

介入前で30%、介入中でも21%

●トリアージ実施から1時間以上の抗菌薬投与が遅延した割合

介入前で85%、介入中にも71%

●抗菌薬投与の遅れと関連する要因

 ・非典型的な所見

 ・救急以外でのトリアージ

 ・低いSOFAスコア

など

【私見】

・介入後も「トリアージから1時間以上の抗菌薬投与が遅延した割合」が 71%と多いことが気になります。抗菌薬を投与するかどうかを検討するのは医師の判断になると思います。そう考えると、抗菌薬投与の遅れと関連した「非典型的な所見」「低いSOFAスコア」というのは、医師の判断を迷わせるところだったのでしょうか。医師の判断を迷わせる要因であることと同時に、患者の病状変化をアセスメントする看護師にとっても、医師に相談すべきか、もしかしたら迷う部分だったのかもしれません。

「迷い」というのはあって当然なものだと思いますが、悩んだ時に相談できる人がいる、相談できるシステムがあるって、とっても大事なんでしょうね!

次に、「救急意外でのトリアージ」です。今、一般病棟で仕事をしているので思うのですが、医師が外来勤務や手術に入っているなどで、医師への報告が遅れる・できない状況ということがよくあります。「アセスメントをして気になる・迷う」ってなった後に、「もう少し様子をみてみよう。」となることがあります。最近はRRSもあり、そちらに相談することもありますが主治医がいるのに、RRSに相談していいのだろうか?と思うこともあります。

徴候が生じた時に気軽に相談できるところがあるって本当に必要だなって思います。個人的にこういった気軽に相談できる窓口に治療の経験もあるし、看護師としての視点ももっている診療看護師さんが役割として担ってくれるととっても助かるなって思いました(あくまでも私見です)。

悩む・迷う時こそ、「様子を見る」「何もしない」という「行動をしない」という「行動」を選択しやすいのは、人間の心理的にもごくごく当たり前の行動になります。

ここで、もう一歩すすめるような「知識」「システム」「文化」があるといいんでしょうね!

【総括】

・今のところ、研究結果的には「1時間以内の抗菌薬」のエビデンスはなさそう

・「時間」に固執することで、他のリスクも生む気がする

・看護師としてできることは、当たり前だけど「患者の変化を早期に発見・治療につながること」

・救急やICUといったクリティカルケア領域だけではなく、一般病棟での早期発見が大切!

・RRSや診療看護師が重要な役割を持っている!と思う!

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