<コラム175:救急看護師は百戦錬磨であるべきか>

 本日9月30日は、「交通事故死ゼロを目指す日」です。令和2年は4月10日、9月30日が同日とされており、いずれも春・秋の全国交通安全運動期間中となっています。毎年、多くの人が交通事故により死傷していることを受け、日本政府が「生活安心プロジェクト」の一環として2008年から実施しています。しかし、前回の「交通事故死ゼロを目指す日」にあたる4月10日ですが、全国で6件6人といった交通死亡事故が起きています。このように、全ての人々が注意していても不慮の事故というものは起こってしまうものです。そこで、外傷患者における初期対応による防ぎ得た外傷死(preventable trauma death:PTD)発生率の減少を狙って様々な教育コースが開催されています。代表的な外傷診療のための教育コースには、病院前救護に関わる救急隊や医療従事者を対象としたJPTECや、病院到着後の外傷初期診療に関わる医師や看護師を対象としたJATEC・JNTECがあります。今回は、「コラム171:ピンチこそチームプレイで乗り切れ!」でも少し触れた外傷初期看護(Japan Nursing for Trauma Evaluation and Care:JNTEC)についてお話ししたいと思います。

 まず、外傷診療においてJNTECを学ことで以下の2点に役立ちます。

■外傷の初療における看護師と医師との協働

 今まで行われてきた「あうんの呼吸」で連携している場面も含め、すでに多くの施設で看護師と医師が協働して診療を進めていることと思います。しかし、それらを明文化して、標準化された方法論と同じように用いればJNTECの真価を発揮できると思われます。

■外傷患者のトリアージ

 体系的なトリアージの方法を救急外来において用いると、単に経験を頼りに行うトリアージに比べて、担当看護師らの職務満足によい影響を与えるとされています。さらに、患者からの苦痛も減少すると言った効果があるともいわれています。

 さらに、外傷医療チームの中で看護師は、看護の基本的機能である「診療の補助と日常生活援助」を発揮しながら、チームの一員として重要な役割を担うことになります。ENA(American Emergency Nurses Association)の外傷看護コースであるTNCC(Trauma Nursing Core Course)では、外傷看護の役割と責務について以下の4つをあげています。

①外傷ケアに関わる計画、管理、調整

②ケア提供のための看護師-患者関係を構築し、促進する

③外傷患者へのケアについて記録する

④研究の評価をし、適切な研究成果を実践に取り入れる

 外傷医療チームが連携し、意思疎通が良好なスタッフ関係を構築し、外傷患者に適切な医療を提供するためには、看護師がチーム内での管理的・調整的役割を発揮しながら、外傷診療の補助と看護独自の機能を十分に果たすことが大切になってきます。

 先日、初療室で私たちの動きを見ていた某大学病院の救急部門の教授に「救急の看護師さんはまさに百戦錬磨だね。」と言われました。この言葉を聞いた時に、ふと思い出したことがありました。ドレイファスモデルを通して看護師のクリニカルラダーを提唱したベナーです。救急初療室において、全く同じ状況で行う看護ケアはないと言っても過言ではありません。救急搬送された患者の状態、すでに治療を受けている他の患者の状況、医師など協働するスタッフのレディネス、などなど初めて経験する状況もあるかもしれません。ベナーは初めて経験する場面において、いくら中堅の看護師でも一人前のレベルまで後退すると述べています。これこそ、救急看護師の看護ケアが百戦錬磨でないといけない所以ではないかと私は考えます。そのためには、救急看護師に必要な3つの能力である「準備性」「予測性」「即応性」を意識して、思考と実践が結びつくような看護ケアを日々行なっていきたいものです。

 皆さんは、百戦錬磨の看護師になるために心がけていることはありますか?

Follow me!