<文献紹介第35弾>「ICU患者が早期離床をするべき10の理由」
【Ten reasons why ICU patients should be mobilized early, Intensive care medicine, 2016】
「できれば患者さんには,“今まで通りの,その人らしい”姿で帰ってほしい」
このような願いを抱かずに患者さんと向き合っている人は,少ないでしょう.ここ数年,PICS(Post Intensive Care Syndrome)という概念が注目されていますが,この概念の根底にある願いも皆さんが抱いている“今まで通り,その人らしく”という願いと同じであると思います.そんな中,早期離床は,我々クリティカルケア領域に携わる看護師が「当たり前にするべきケア」として捉えているといっても言い過ぎではないでしょう.
しかし,この「そうなってほしい姿」や「するべきケア」は,認識することよりも実現することの方がよっぽど難しいことで,以下のような疑問は皆さんも抱いていることではないでしょうか.
「そもそも,早期離床は患者にとって何が良いのだろうか?」
「早期離床を実現することは可能なのだろうか?」
「早期離床を実現することで得するのは患者だけなのだろうか?」
今回ご紹介する文献では,これらの疑問に対して,早期離床をするべき10の理由として答えてくれています.
「早期離床は患者にとって何が良いのか?」という疑問に答えてくれる5つの理由は,
①早期離床は,臥床に伴う合併症を減らすものである
②早期離床は,ICU-AWに対する取り組みである
⑤早期離床は,鎮静剤の使用を減らす
⑦早期離床は,患者の機能改善につながる
⑧早期離床には,せん妄を改善する可能性がある
「早期離床は実現可能なのか?」という疑問に答えてくれる4つの理由は,
③早期離床を受け入れるための障壁は,乗り越えられる
④早期離床を実現している施設がある
⑥早期離床の実践は,安全なものである
⑨テクノロジーの進化が早期離床を可能にする
「早期離床で得をするのは,患者だけなのか?」という疑問に答えてくれる1つの理由は,
⑩早期離床によって,無駄な資源を減らすことができる
(数字は,文献の中で紹介している順番です)
「何だ,そんなことか」と思われている方もおられるかもしれません.そう,早期離床の必要性で分かっていることは,まだ“そんなこと”までなのです.だからこそ,早期離床に関してこれから取り組むべき疑問もたくさんあるのだと思います.
例えば,鎮静剤はどのように使用すれば良いのでしょう? 早期離床は誰にでも同様に行って良いものなのでしょうか? そもそも,早期離床の効果は,いつどのように評価すれば良いのでしょうか?
これらの疑問に答えるためのヒントや,これら以外の新たな疑問を与えてくれるのは,今皆さんが実践されている「早期離床の取り組み」だと思います.そして,その取り組みについてディスカッションし,修正し,改めて取り組み直し,「もっと良くするためには」とカイゼンをし続けることが,疑問の解決にとって一番の近道だと思います.
あなたの施設では,早期離床に関して何を目指し、どのように取り組み、どのような結果を導き、何に悩んでいますか…?
画像の引用元:https://www.ttsh.com.sg/about-us/newsroom/news/article.aspx?id=3850