あなたの家族が,ある日突然「以前の生活」を送ることができなくなったとき,あなたはどうなると思いますか?
脳卒中は,その発症自体がQOLに大きく影響する代表的な疾患の一つです.この背景には,脳卒中を発症した人が “生活の中で誰かに頼らざるを得ない” 状態に陥ることが多いという問題があります.脳卒中急性期の患者に出会うことの多い皆さんなら,このような問題があることは容易に理解できるでしょう.と同時に,想像もつかないような生活が,「目の前にいる患者とその家族」に待ち受けていることも予想できるのではないでしょうか.そして,このような現実は決して稀なことではなく,明日にだって出会うことかもしれません.
明日,このような現実に出会ったとき,我々クリティカルケア看護師には何ができるのでしょうか?
『Common Caregiver Issues and Nursing Interventions After Stroke, Stroke誌;45,e151-e153,2014』
大切な人が脳卒中になってしまったという問題に直面した家族に着目して,そこにどのような問題があり,看護師に何ができるのか考えるきっかけを与えてくれているのが,今回紹介する文献です.
この論文では,【介護者個人の問題】【患者-家族の対人的な問題】【患者や家族を取り巻く組織的な問題】の3つの問題を紹介してくれています.
【介護者個人の問題】では,
突然降りかかった現実を受け止める過程の中で,家族の身体的・心理的な問題はどのように変化しているのか,家族が今後の生活のために求めているのはどのようなものなのか,それを獲得するための困難さにはどのような背景があるのかなどを….
【患者-家族の対人的な問題】では,
“生活の中で誰かに頼らざるを得なく”なってしまった患者を取り巻く,「役割の変化」によって引き起こされる問題や,家族の新たな役割の獲得過程や,新たな関係性を築き直すための障壁などを….
【患者や家族を取り巻く組織的な問題】では,
家族が「自分たちを支えてくれるリソースには,どのようなものがあるのか」を十分に理解できていない現実や,そのようなリソースへの接近の仕方や,組織が家族を守ることは患者の幸福に繋がることなどを….
さらに,家族の経験を踏まえて,【それぞれの問題へ看護師がどのように関わることが求められているのか】についても教えてくれています.
そして,そこでは「相手や状況に合わせて関わること」「初期の段階から繰り返し長期的に関わること」の大切さが共通して強調されています.
クリティカルケアの守備範囲は,「どこからどこまで」でしょうか?
「どこに,どのように,何を」繋げていけば良いのでしょうか?
相手を理解するためには,「どのような対話のあり方」が必要なのでしょうか?
明日からの看護を考えさせてくれる文献だと思います.
お時間のあるときに読んでもらって,みなさんとの意見交換がしてみたいなと思いました.
(注)
訳は,投稿者が行ったものです.
訳の内容や解釈がズレているかもしれないことだけは,ご了承下さい(その辺りも含めてディスカッションできたら,さらに嬉しいです!).
画像引用元:http://strokeconnection.strokeassociation.org/Summer-2014/How-to-be-a-Happy-Caregiver/
論文と翻訳:http://goo.gl/lEvuM8