【コラム80:コミュニケーションはやっぱり大事!!】
私たち医療職は、日頃から患者・家族とコミュニケーションを図りながら、ニーズを把握し、ケアを選択・実践していると思います。このコミュニケーションは、患者・家族から心理・社会的な情報を収集するためには医療者にとってとても重要なスキルです。
しかし、臨床ではコミュニケーションについて、他者からフィードバックをもらったり、学ぶ機会も少ないというのが現状ではないでしょうか。そのため、「聞いたら相手が嫌な思いをするかもしれない」という日本人特有の“配慮、気配り”や「本当は聞きたいことがあるのに、聞き方がわからない」など、コミュニケーションの難しさを理由に、本来患者・家族から得るべき情報をとれずジレンマを感じることも少なくありません。とはいえ、私たちは専門職業人です。専門職業人として患者・家族のプライバシーに踏み込む勇気を持ち、うまく踏み込むコミュニケーションスキルの習得が必要なのかもしれません。
今回は、コミュニケーションスキルの中でも、「情報収集・傾聴」と「共感」のポイントを紹介したいと思います。
情報収集・傾聴のポイント
- 必要な医学的情報が聴けているか(症状)
- 患者の生活や不安(社会的情報)が聴けているか(事情)
- 患者の思いや不安(心理的情報)が聴けているか(思い)
- 患者の病気に対する考えや理解(解釈モデル)が聴けているか(受け止め)
- 受診に至る患者の受療行動や過去の対処行動を聴けているか
- 患者の気持ちや背景に迫る機会を踏み込んで聴けているか
上記①~⑥の中で、私が個人的に重要だけど最も難しいと感じているのは⑥です。特にネガティブな感情を抱えている患者の場合には、踏み込みを躊躇してしまうこともあります。うまく踏み込むためには、患者・家族に「この人ならわかってもらえるかもしれない」と思ってもらえるような関係性を作ることも重要です。そのために活用できるのが「共感」です。私も、看護学生時代から「患者の思いを共感しなさい」とよく言われてきましたが、臨床で働いてみると「共感する」ってそう簡単なことじゃないなと感じました。
この「共感」の基本は、“オウム返し”であり、“事実のオウム返し”と“感情のオウム返し”があるようです。中でも、“感情のオウム返し”がより重要だと言われています。
“事実のオウム返し”と“感情のオウム返し”は何が違うのか。簡単に例えると以下のようになります。
“事実のオウム返し”
大動脈弁置換術を受ける予定の患者:「昨日、全然眠れなかったんです」
受け持ち看護師:「そうなんですね。全然眠れなかったんですね」
“感情のオウム返し”
大動脈弁置換術を受ける予定の患者:「昨日、全然眠れなかったんです」
受け持ち看護師:「そうなんですね。眠れないくらい気がかりなことがあったんですね」
うまく表現できないですが、気にしてくれてる感がだいぶ違いますね(個人的感想)
また、“感情のオウム返し+踏み込んだ質問”を活用した場合、以下のようになります。
大動脈弁置換術を受ける予定の患者:「昨日、全然眠れなかったんです」
受け持ち看護師:「そうなんですね。眠れないくらい気がかりなことがあったんですね。もし良かったら、もう少し(気がかりなこと)詳しく教えていただけませんか?」
私も、このコラムを書きながら、改めてコミュニケーションは難しいなと感じています。しかし、先述したように専門職業人としてコミュニケーションスキルを習得することは重要です。このコミュニケーションスキルを習得するためには、まず“良いコミュニケーション”と“悪いコミュニケーション”がわからなければいけません。そのための第一歩として、皆さんの周りの人のコミュニケーションを観察してみてはいかがでしょうか?
そして、自身のコミュニケーションも他者に観察してもらい、フィードバックしてもらうのも良いかもしれないですね。