ICUから死亡退院されたご家族様に病院から連絡をとったりされている病院はありますか?!
大切な方を亡くされたご家族様は、その後どのような経過を辿るのでしょうか。
今回は、そんなICUを死亡退院され、残されたご家族様に焦点を当て、お悔やみの手紙を送ることがご家族の悲嘆のプロセスにどのような影響を与えるのか調査した研究をご紹介します!
Effect of a condolence letter on grief symptoms among relatives of patients who died in the ICU: a randomized clinical trial
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28197680
研究方法
研究デザイン:RCT
期間:2014年12月~2015年12月
施設:22施設のICU in France
対象者:少なくとも2日間ICUに滞在した18歳以上の患者の親族
介入方法
手紙は患者が亡くなった後、15日後に親族に送られました。(親族は患者につき1人の親族を対象とし、代理者もしくは最も関わった人を親族とした。)
【調査方法】
患者の死後30日、6ヶ月に親族に電話でインタビューを行った。
【調査項目】
1ヶ月後のHADS(不安・抑うつを評価するスケール)
→点数が高いほど、不安・抑うつと診断される。
6ヶ月後のHADS、IES-R(PTSDを評価するスケール)
→点数が高いほど、PTSDと診断される。
ICG(複雑性悲嘆を評価するスケール)
→点数が高いほど、複雑性悲嘆と診断される。
【結果】
365名の患者の親族のうち242名が対象となった。
そのうち、介入群:123名、対照群:119名に割付られた。
①1ヶ月後のHADSの違い
1ヶ月の時点で、208名(85.9%)の対象者が研究対象となっている
対照群:HADS:中央値14(IQR 8-21.5)
介入群:HADS:中央値16(IQR10-22)
両群間で有意な差(P=0.36)は見られませんでしたが、介入群の方が高い結果となっている。
②6ヶ月後のHADSの違い
6ヶ月の時点で、190名(78.5%)の対象者が研究対象となっている
対照群:HADS:中央値10(IQR4-17.5)
介入群:HADS:中央値13(IQR7-19)
と介入群でHADSのスコアが高く、両群間で有意差(P=0.04)が報告された。
また、IES-Rが26以上となった対象者の割合(IES-Rが25点以上でPTSD症状のリスクが高いとされている)
対照群:33%
介入群:53%
と介入群の方が該当者の割合が多く、両群間で有意差(p=0.03)が報告された。
【考察】
ICUで死亡した患者の親族はお悔やみの手紙をもらうことでは、悲嘆症状をできず、うつ病やPTSD関連症状が悪化している可能性がある。
【私見】
結果を単純に解釈すると、介入(お悔やみの手紙を送った群)した方が、不安・抑うつ、PTSDスコアが高いという結果になります。 「やっぱり、お悔やみの紙なんて送っちゃダメだよ!」と簡単に解釈していいのでしょうか!?
こういう時こそ、「内容はどうだったのか、タイミングはどうか、対象者はどうか?」と一つ一つ考えていく必要があります。内容を変える、送るタイミングを変えるなど試行錯誤の結果、良い結果が得られる可能性もあると思います。一つの研究結果を元に、自分達ならどうするか、考えていくことがとっても大切なことだと思います。
もし、日本で実施する場合、
今回のように2週間程度を目処にするのが良いのか?
日本で言えば四十九日のタイミングが良いのでしょうか?!
この議論は、きっと文化・宗教的な背景が関わってくる可能性があるため、そこも考慮に入れる必要もあると思います。