【コラム121:インフルエンザ脳症について】

年末あたりから大流行のインフルエンザ。今年度はA型が流行していますね。
約10年ほど前に、タミフル内服による異常行動の報道が相次ぎましたが、真相はご存知でしょうか?
平成30年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討により、インフルエンザ罹患後の異常行動がタミフル(オセルタミビル)使用者に限った現象ではないと判断し、全ての抗インフルエンザ薬の添付文書について副作用の項に「因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある」と追記されています。
つまり、インフルエンザウイルスそのものによる異常行動と、薬剤由来と考えられる異常行動に分かれるようです。原因はいずれにせよ、異常行動とも関連し、インフルエンザで最も恐ろしいのが「インフルエンザ脳症」です。
【インフルエンザ脳症について】
インフルエンザ罹患後の発熱から、早期の段階(多くは24-48時間以内)で、嘔吐、異常行動、意識障害、 けいれんなどがみられ、1歳をピークとして幼児期に最も多く見られます(男女間の差なし)。厚生労働省の研究班の調査結果から、日本ではおよそ次のような状況にあると推定されています。
・インフルエンザの流行によって異なるが、1シーズンに100~300人の小児がインフルエンザ脳症を発症する
・A香港型の流行時に多発するが、B型でも発症する
・死亡率は当初約30%であったが、最近は10%程度に低下した。しかし、後遺症は約25%に見られる
インフルエンザ脳症は、日本からの報告が多く、また、小児例が報告の中心となっているという特徴もあります。クリティカルケア領域では馴染みのある「せん妄」をイメージしていただくと良いかもしれません。インフルエンザが原因の異常行動も「急性の脳機能障害」です。特に小学生以下のお子さんがいるご家庭では、「インフルエンザもただの風邪だから」と静観せず、インフルエンザ脳症が危惧される場合には、脳症治療が行える適切な医療機関の受診が必要だということですね。
参考URL:
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/579504/
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2019-2020_influenza_all.pdf